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 絵画やオブジェの制作を通じて、脳を活性化する臨床美術を県内で広めようと、和歌山市の臨床美術士、南方恵子さん(62)が、同市の介護福祉施設で施設利用者対象に教室を開いている。「創作する過程を楽しむ美術。高齢や認知症の方にアートの喜びを味わってほしい」と笑顔を見せる。

 臨床美術は1995年に日本の彫刻家、医師らが開発したプログラムで、対象物を触ったり、においをかいだり、音楽を聴いたりしながら創作する。五感を刺激し、右脳を活性化させ、認知症の予防を目指す。いやし効果も期待され、発達障害児やひきこもりの人、社会人向けの心の健康講座などでも取り入れられている。

 美術関係の仕事をしていた南方さんが臨床美術を始めたのは2年半前。認知症患者が臨床美術の手法で描いたレタスの絵を新聞で見たのがきっかけだった。「絵心あふれる絵で、『これこそ本当の美術だ』と胸に響きました」。同年、京都造形芸術大学で臨床美術士の資格を取り、昨秋から月1回の教室を始めた。

 3月16日の教室は、70代~90代の7人が参加。さつま芋のにおいをかぎ、じっくり手で触れ、「でこぼこしてる」「少し乾燥してるかな」と確かめた後、ふかした芋を食べながら、芋の思い出を語り合った。16色のパステルクレヨンから芋の中身の色と味を連想する色を選んで描いた後、上に好きな皮の色を重ね、約1時間で仕上げた。

 9月から参加する85歳女性は「魔法にかかったみたいに本物のようなさつま芋ができた。絵が苦手だったが、習い始めて生き返ったかのように楽しい。個展を開いてみたい」と目を細めていた。

 次回は4月に開く予定で、南方さんは「皆さん表情が明るく、話をしてくれるようになります。伝える側の私も生きる喜びをもてるようになったので、教える人、習う人の両方が増えてくれれば」と望んでいる。

 詳細は南方さん(073・445・2155)。

写真=指導する南方さん(左)

(ニュース和歌山2015年3月28日号掲載)