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 昨年6月に成立した医療介護総合推進法を受け、4月1日に介護保険制度が改定された。今後3年間でこれまで国が一律で定めていた要支援1、2の利用者向けの訪問・通所介護サービスが市町村に移管され、市町村はサービスの担い手となる住民組織の立ち上げに迫られている。組織はボランティアが主体となり、高齢者同士の支え合いを目指すが、各自治体の動き出しは鈍い。そんな中、民間から助け合いの輪を広げる活動が始まった。

元気なシニア活用へ模索

 介護保険料の給付額は、急激な高齢化社会で、制度が始まった2000年度の3・6兆円から14年度には約10兆円と年々増加している。制度維持のため、今回の改定では介護度の低い人や一定額以上の所得がある人への給付を抑え、重度の人への支援に回す。今春は、介護報酬の引き下げ▽保険料の改定▽特別養護老人ホームへの新入居が原則要介護3以上に、8月には一定の年間所得を超える人の負担を現在の1割から2割へ▽1000万円以上貯金を持つ施設入居者の食費などへの補助を縮小などを変更する。

 サービスでは、要支援1、2の人向けの訪問・通所介護サービスを17年度末までに市町村へ移す。訪問に関しては、市町村は社会福祉協議会などに住民主体による生活支援組織を創設。これまでホームヘルパーなどが介護に加え、ゴミ出しや電球交換などの生活援助も行っていたが、それらの線引きを明確化し、生活援助は支援組織が請け負い、介護認定次第ではヘルパーに来てもらえなくなる利用者も出る。移行時期は市町村ごとに異なり、本紙配布地域の和歌山、紀の川市は17年度末まで、海南、岩出市は18年度と決めている。

 生活支援組織の担い手として想定されているのがボランティアだが、問題はその確保。和歌山市は今年度、地域包括支援センターを8ヵ所から15ヵ所へ増設し、地域ごとの利用ニーズと支援側に回れる元気なシニアを探す。海南市は関係者を集めての勉強会を開く予定。具体的な担い手の顔が浮かばない中、各自治体は他市町村の動きを見ながら制度作りを進める状況で、介護保険の改善をめざす和歌山実行委の森田隆司さんは「従来の専門職と異なり、ボランティアと仲違いすればサービスを利用しなくなり孤立するリスクがある。制度の〝漏れ〟がないルール作りが必要」とみる。

 今年度に移行する県内の市町村はゼロ。県は14年度から市町村の社会福祉協議会を中心にボランティアの拠点作りのための補助金を出しているが、14年度は新宮市、今年度は古座川町のみの見通しで動き出しは鈍い。「人口の少ない和歌山は、密集して暮らしておらず、ボランティア確保が難しい」と県長寿社会課。

 ボランティアの需要が高まるのを見据え、高齢者の生きがいづくりに取り組む和歌山高齢者生活協同組合は3月、00年度から続ける生活支援ボランティア〝お助け隊〟の交流会を初めて開いた。会員間の情報共有と新たな展開につなげようと、県内各地で活躍する約60人が集まり、それぞれの活動を発表した。

 参加した宇治田康司さん(73)は「これからの時代、年配者が技能を生かし、地域を支えていかないといけない」とにっこり。同組合スタッフの篠原道雄さんは「高齢社会で、見守り活動や人のつながりは欠かせない。仲間を増やし、生きがいづくりとつながりづくりの輪を広げていきたい」と話している。

写真=〝お助け隊〟が初の交流会を開いた

(ニュース和歌山2015年4月4日号掲載)