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 万葉故地、和歌浦で初日の出を見る会を20年間開いてきた和歌山市三葛の洋画家、中尾安希さん(73、写真)。自ら描いた20年分の水彩画をまとめて5月1日(金)~5月4日(月)に和歌の浦アートキューブで展示する。「水彩絵の具が凍ったことが2度ほどありました。そんな年も太陽に手をかざすとあたたかかった。夜明けの豊かな表情を楽しんでほしい」と願う。

 会を始めたのは1996年。94年暮れにあしべ橋建設の是非を問う裁判が終わったのがきっかけだった。「まだ和歌浦には美しい景色が残っていることを知ってもらいたかったんです」。元日、あしべ橋付近からだと生石高原あたりに太陽が顔を出す。「内海の対岸にある建物はちょうど逆光になり、見えにくくなる。万葉の時代の人たちが見ていたのとほとんど同じ風景がよみがえるんです」とその魅力を語る。

 1回目は7人だった参加者は年々増え、天候に恵まれた年は県内外から約300人が集まった。キャンバスに向かったり、カメラを構えたり、俳句を詠んだり、手を合わせたり。思い思いに楽しむ参加者を温かいコーヒーや紅茶でもてなした。

 会は20回の節目を迎えた今年で最後とした。「和歌山市に住んでいながら、和歌浦の景色のすばらしさを知らない人が多く、気づいてもらうきっかけにと続けてきました。思い出深いのは初日の出が見えた瞬間、集まった人たちから歓声が上がったことですね」

 展覧会には4月14日~4月22日に日本一周した際、全国で描いたスケッチも。NHKの朝ドラ「マッサン」の舞台になった北海道の余市蒸溜所、階段状に浸食された海岸が「鬼の洗濯板」と呼ばれる宮崎県の青島など約15点を並べる。

 会場で作品や絵ハガキを販売し、収益を紀三井寺の石灯ろう修復のために寄付する。午前10時~午後5時(最終日3時)。中尾さん(073・445・2756)。

(ニュース和歌山2015年4月25日号掲載)