2015061302saimon

 平和や持続可能な社会を考える日本ユネスコ運動全国大会が6月6日と6月7日、和歌山市民会館で開かれた。6月7日には和歌山大学観光学部特任助教で映像ジャーナリストのサイモン・ワーンさんが「和歌山の伝統文化」をテーマに、太地町の古式捕鯨について語った。

 オーストラリア出身のサイモンさんは、2007年に欧米の海洋環境保護団体から依頼を受け、反捕鯨を訴えるテレビ番組『鯨戦争・シリーズ1』を撮影。真実が伝えられていない映像製作に疑問を抱き、自らの目で確かめようと08年に来和し、太地町での現地取材や石造りの堤防の復元、文献調査など私費で研究を重ねている。

 講演では太地に伝わる捕鯨船や、古式捕鯨を描いた江戸時代の屏風(びょうぶ)などを紹介。日本人や県民でさえ、太地の文化を知らない人が多いこと、英語で書かれた海外向けのガイドブックには太地の町名が省かれていることにふれた。「太地町には世界で唯一の持続可能な捕鯨文化がある。説得力のある物語を再構成し、ユネスコの産業遺産へ登録したい。登録されれば、日本や海外の人が真実を知り、今起きている論争への答えになる」と力説した。

 話に耳を傾けていた埼玉県の田村勝彦さんは「本当は日本人が中心になって取り上げないといけないのに、代弁してくれている。伝統と歴史、食文化の違いを伝えるメッセージを日本人が世界へ発信し、世論を喚起できれば」と話していた。

写真=自らの調査をふまえ語るサイモンさん

(ニュース和歌山2015年6月13日号掲載)