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 東日本大震災時、大阪市が被災地に派遣した緊急消防隊の隊長を務めた木村忠彦さんが6月16日、和歌山市吹上の和歌山大学附属中学校で講演した。木村さんは「30年以内に70%の確率で南海トラフ地震が起こると言われている。避難訓練をしっかり行い、いざという時に命を守ってほしい」と生徒419人に訴えた。

 木村さんは現在、淀川消防署署長で、震災当時は大阪市消防局警防部に所属。全国でいち早く隊員500人、消防車100台を現地に送り出し、指揮を執った。隊員が懸命に探したものの、がれきの中から見つけた207人中2人しか生存者がいなかったことや、小さな子をかばう姿で亡くなった父親の遺体に涙した経験など、過酷を極めた状況を振り返った。

 また、避難訓練を生かして釜石市の小中学生全員が助かった「釜石の奇跡」や、災害ボランティアを体験した大阪の中学生、福島の原発事故についてもふれ、「生きるか死ぬかはほんの少しの差、紙一重という現場をたくさん見て来た。日ごろから避難場所などを意識し、地震が起きてもしっかり生き残って復興を目指して」と結んだ。

 熱心にメモを取っていた2年D組の湯川菜月さんは「釜石の奇跡の話を聞き、附属中もそうなりたいと思いました。署員の人々は2、3日寝ないで救助に当たっており、すごいと驚きました」と話していた。

(ニュース和歌山2015年6月27日号掲載)