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  実りの秋、すでに稲刈りを終えた田もある中、同じく収穫期を迎えたのがマコモだ。イネ科の植物で、食材になる根元の白い部分をマコモタケと呼ぶ。ほのかな甘みがあるほか、タケノコのようにシャキシャキとした食感で、中国料理では高級食材とされる。比較的手間を掛けずに栽培できることから、増える耕作放棄地対策になると注目を集める。和歌山県内の状況を見た。

 海南市南東部、山間部の海老谷地区には急斜面を利用してつくられた棚田が広がる。その棚田の一番上、岩本賢祐さんの田で2㍍ほどにまで成長しているのがマコモだ。根元がふくらむ9月下旬~10月が収穫期。妻、真喜子さんは「少し緑色の部分は皮をむき、そのままサラダとしても食べられます。おすすめはきんぴらと天ぷら。うちではみそ汁にも入れますよ」。

 カリウムや食物繊維を多く含むマコモタケ。あくが少なく、味に癖がないことから、和洋中どんな料理にも合う。岩本さんは3年前、近所の農家にもらい、食感の良さにひかれ栽培開始。防草用シートは使うが、真喜子さんは「農薬を使わなくても今のところ、うちでは虫はついていないし、病気もない。大きな手間はかかりません」。

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 海老谷地区では今年、岩本さん宅を含め、3軒の農家が育てる。収穫後は同市重根のとれたて広場に出荷。同店では昨年まで、店頭で天ぷらにしたり、農家が作ったきんぴらを並べ、試食で客に味をPRするほか、レシピを配布してきた。「先日、お客さんから『マコモ、今年はまだ?』と聞かれました」と湯川哲志店長。消費者にも定着しつつあるようだ。

 和歌山市府中で環境保全型農業を行うにこにこのうえんは4年前から栽培。栽培面積を昨年の2アールから今年は5アールに増やした。吉川誠人代表は「米は収穫時、田に水が残っていると収穫用機械がドロドロになって大変なので、水はけの悪い田にマコモを広げました。あぜの草を刈るくらいで手が掛からず、2㍍と背が高いので、生えた雑草にも負けません」。

 10月には同農園から届く季節の野菜セットの一品として消費者の元へ。また、収穫ピーク時は同市西高松のメッサオークワ高松店の農家直送コーナーに並べる。今年は同農園が運営するぶらくり丁のレストラン、石窯ポポロでピザやパスタの食材に使う予定だ。吉川代表は「おいしく、食物繊維が豊富で、栽培しやすい。休耕田対策になるとは思いますが、短い収穫期間に上手に売る方法が必要では」と指摘する。

 4年前から栽培技術開発に取り組む県農業試験場(紀の川市)の川村和史主任研究員も「市場に出してもまだ知らない人が多く、値段が付かない。他府県も直売所で売っているところがほとんど」と説明。一方、刈り取りは鎌で行うため、大型機械はいらず、機械が入りにくい中山間地域での栽培にメリットが見込める。「とれたて広場で販売する海老谷が1つの見本。和歌山は直売所が充実しているので、そこを核に広がれば」と期待。とれたて広場の湯川店長は「中山間地域は作物を作りにくいけれど、自然環境面では守っていかなければならない場所。計画的に栽培を進め、〝マコモ祭り〟といった感じでイベントを開き、PRできるようになればいいですね」と話している。

写真 このページ上=約2㍍に成長したマコモ(海南市海老谷で)

(ニュース和歌山2015年10月3日号掲載)