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 11月1日は「全国家具の日」。家具の〝治療〟を専門にする〝病院〟が和歌山市古屋にある。「家具の診療所ドクターシックス」はいすやソファの張り替え、テーブルのがたつきやキズの修復などに対応する。岡田佳久代表は「エアコンの風や太陽光に長く当たると、木の部分にひびが入ったり、塗装がはげたり、長年使えばいすのクッション部分がへたったりと、家具も〝病気〟になる。思い出の詰まったものを末永く使ってもらえるお手伝いができれば」と優しくほほえむ。

 「家具を直してほしいんですが」。電話がなると、〝病状〟を聞き取って〝問診票〟に書き込み〝往診〟。その場で直せなければ、診療所へ持ち帰って〝入院〟──。

 元々、アメリカ製の中古家具を取り扱う専門店で、中古品を仕入れて修理し、販売していた。そのうち、「自宅の家具を直してほしい」との依頼が舞い込むように。「販売と修理の件数が逆転し、4年前に修理に特化したんです」。岡田代表は説明する。

 「リクライニングチェアの背もたれが動かなくなった」「このロッキングチェアで、正月に帰省する孫を遊ばせたいのですが」「アンティークのトランクをテーブルにリメイクしてほしい」…。相談内容は多種多彩。いすやソファの張り替えについても、「同じ色のままで」「引っ越した部屋の色合いに合うように」と様々だ。これに5人の職人が応じる。岡田代表は「皆さん、購入時には家の間取りに合わせ、ぴったりのサイズのものを探して購入しますし、長く時間を共にし、家具に愛着を持っておられる。ケースバイケースですが、同じものを購入するより安く直せますよ」。

 同市の60代男性会社員は今春、ダイニングチェアのマットの交換で相談。仕上がりの良さに満足し、キャビネット、そしてソファと続けて依頼した。「3つとも20年以上前に家を建てた際に購入した家具。マットの硬さやキャビネットの色つやなど細かい部分まで対応してくれました。使える物は使わないともったいないですから」

 個人宅だけでなく、飲食店や病院からの依頼も多い。この場合、営業や診療に支障が出ないよう、例えばソファやいすの張り替えなら、あらかじめサイズを測り、型を取って生地を完成させておき、休みの日は張り替え作業だけを手早く済ませる。

 修理中、家具のすき間から鉛筆やおもちゃなどが出てくることもある。「びっくりしたのは結婚指輪ですね」と岡田代表は笑う。「修理が終わって〝退院〟し、自宅に送り届けた際のお客様の笑顔が何よりの報酬です」。喜ぶ顔を想像しながら、きょうも〝患者〟と向き合う。

 詳細はドクターシックスHP。同店(073・454・9999)。

写真=〝ドクター〟ならぬ職人が〝患者〟を〝治療〟

(ニュース和歌山2015年10月31日号掲載)