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 総務省統計局の誘致を目指す和歌山県は、統計データの活用法を地域に浸透させる取り組みを進めている。6月9日には和歌山市西庄の八幡台小学校で調査統計課の若手職員が出前授業を実施。データから見える和歌山の特徴や統計の必要性を伝えた。

 出前授業は和歌山県が実施する「出張!県政おはなし講座」の一環で、高校生以上対象の授業を小中学生向けにアレンジした。この日は4年生32人に、和歌山県内の森林面積の割合や、梅の生産量が全国の約6割を占めることをグラフで示し、「調べた数字を表やグラフにすると分かりやすくなります」と説明。和歌山県人口の見通しや和歌山市の牛肉消費量が全国2位であることを紹介し、「統計を使うと将来の予測ができ、和歌山の新たな一面が見えます」と強調した。

 吉村幸音(ゆきね)さんは「人口が減っていくのが印象的だった。全国の統計も見たい」。原望輝翔(みきと)くんは「和歌山は森の割合がこんなにも多いとは知らなかった。県内で一番高い建物や多い天気を調べたい」と目を輝かせていた。

 西峰健副課長は「データに基づいた合理的な考え方は、将来大人になっても役に立つ。授業をきっかけに統計に興味を持ってもらえれば」と望んでいる。

写真=棒グラフを指しながら、和歌山の牛肉消費量を説明

 

 

移転決定は8月末予定

 誘致の背景には、国が昨年3月に地方創生政策の一環で打ち出した、中央省庁の地方移転がある。東京一極集中の是正、職員の移住による地方の人口増と経済活性化が目的で、和歌山県は昨年8月に統計局の誘致に名乗りをあげた。

 和歌山県はこれまで、効率良い政策判断をするため全国で行われている統計調査に加え、独自に地元企業に聞き取り、経済動向を分析。全国に先駆け20年前から、情報管理の専門家が国内外から集まる大会を毎年開いてきた。こうした経験を生かし、統計データを活用した産業の育成と研究の発展を図ろうと、統計局の誘致を考えた。

 今年3月には、国が統計データの利活用に関連する業務の移転方針を示し、7月に一部を和歌山で行う。並行して県は、データの活用法を学ぶ研修やシンポジウム、学校への出前授業を通じて地元で理解を広げ、統計の活用にたけた地域として誘致実現を目指す。

 移転の結論は8月末までに出る予定。誘致活動を進める和歌山県企画総務課は「ネットワーク設備の整備だけでなく、システムの技術を支え、企画する人材の育成が大切。データの利活用は今後大きく伸びる分野で、移転が実現すれば産官学いずれも大きな波及効果が期待できる」としている。

 

統計データ利活用シンポジウム

7月7日(木)午後1時、和歌山県民文化会館小ホール。学習院大学の伊藤元重教授が「統計活用と経済政策」、和歌山大学の瀧寛和学長が「データサイエンティストの育成に向けて」と題し講演。パネルディスカッション「データによる新たな価値の創造に向けて」も。無料。住所、氏名、電話番号、所属団体を書き和歌山県企画総務課(FAX073・422・1812、メールe0201001@pref.wakayama.lg.jp)。受け付けは6月21日~7月5日。企画総務課(073・441・2334)。

 

(2016年6月18日号掲載)