リオで熱戦展開中のオリンピック。こうした国際舞台で活躍する選手の育成を目指し、県教委が取り組む「ゴールデンキッズ(GK)発掘プロジェクト」が10年を迎えた。運動能力の高い小学生に専門家による育成プログラムを実施する事業。昨年の紀の国わかやま国体では修了生から3人の優勝者を含む13人の入賞者が出た。県教委スポーツ課の安野秀樹さんは「地元国体で一つの成果を出せた。今後は2020年の東京、さらにその先の五輪に出られる選手を輩出したい」と張り切っている。

 

 地元国体13人入賞 目指すは五輪代表輩出

 

GK本文 「どうしたらうまく投げられるか、各班で考えよう」。8月8日、紀北青少年の家で開かれた小学4年のサマーキャンプ。縄を結んだペットボトルをプールサイドから投げ、プール内の仲間を助けることを想定した課題に約30人が挑む(写真)。西和佐小の柿原立(りつ)君は「水を入れすぎず、ロープの方を持って投げると飛びやすい」と笑顔を見せる。

 この日は救助用の人形の顔が水に浸からないよう、各班でいかに早く運ぶかの課題にも取り組んだ。いずれも仲間と解決することを通し、コミュニケーション力や最後までやり遂げる大切さを身に付けるのが目的。宮小の寺村心海(ここみ)さんは「ケンカになってしまうこともあるけれど、自分の意見を言い、他の子の意見もしっかり聴いて、みんなで協力するのが大事」。柿原君、寺村さんとも将来の夢は陸上での五輪出場だ。

 GK発掘プロジェクトは、希望する小学3・4年生対象に体力測定会を実施。合格した30人あまりを対象に4~6年の3年間(4年生での合格者は2年間)、身体能力や知的能力、食育に関する育成プログラムを毎月2回開く。トップアスリートの話を聞く機会や様々な競技の体験会、保護者向けの栄養講座もある。

 修了生は早くも結果を出している。昨年の地元国体には23人が出場し、13人が8位以内に入った。うち、レスリングの吉田隆起選手(当時和北高3年)ら3人は優勝。このほか、インターハイや全国中学校体育大会で活躍する選手も多く、今年のインターハイ陸上競技女子やり投げを2年で制した長麻尋選手(和北)も修了生だ。

 年代別の日本代表に選ばれ、国際大会に出場する選手も毎年5人前後いる。その一人、向陽高1年の山下光選手は小学2年で野球を始め、5年の冬、GKで体験したフェンシングに転向した。昨年夏の全国大会で3位に入り、今年1月に開かれたシンガポールカデワールドカップに出場。団体3位、個人7位に入った。「GKで学んだ準備運動の大切さや食生活に関することは今も役立っていますが、受けて良かったと思うのは、フェンシングに出合わせてくれたこと」と語る。

 1期生は今春、高校を卒業した学年。和歌山大学教育学部に進学した毛利かなでさんは、保健体育の教師を目指す。陸上部で競技を続ける一方、時間が許す限り、GKの講習会に顔を出し、指導理論を吸収する。「元々、陸上は走るだけとのイメージでしたが、GKで学ぶ中で面白いものだと分かった。そんなスポーツの楽しさや奥深さを伝えられるようになりたい」と目を輝かせる。

 県教委スポーツ課の安野さんは「1期生は高校を卒業し、いよいよ年代を問わない中で国際大会での勝負が始まる。どう成長するか楽しみ」。さらに、「スポーツはもちろん、様々な分野で活躍する修了生が出てくれるとうれしい」と期待している。

 

【今年度の体力測定会】

○日程
・第1ステージ=11月19日(土)に田辺スポーツパーク、26日(土)と27日(日)に和歌山市手平のビッグウエーブ(いずれか1日を選ぶ)
・第2ステージ=来年1月22日(日)に手平のビッグホエール

○募集人数 小3=30人、小4=若干名

○応募期間 9月1日~30日

○問い合わせ 県教委スポーツ課073・441・3753

 

(ニュース和歌山2016年8月20日号掲載)