町の景観を形づくる建築を評価し、和歌山の価値を高めようと、県建築士会などで構成する建築三団体まちづくり協議会がきのくに建築賞を新設した。8月27日に和歌山市西高松の松下会館でプレゼンテーションと審査を公開し、80人が聞き入った。島桐子会長は「賞を通して、建物は景観の重要な要素であり、町の財産という意識を、建築を依頼する人や設計者、また、一般の人に持ってほしい」と願いを込めた。

 県内の建築を評価する賞は、県が200120160903-kentik年までふるさと建築景観賞、海南市が06年まで市建築文化賞、和歌山市が07年まで市優良建築物賞を設けていたが、それ以降は途絶えていた。この間、建築士から「建築に興味を持ってもらう機会を」「建築関連業界の励みに」と賞の必要性を訴える声があり、昨年、同協議会がスタートしたのを機に制定を決めた。

 対象は、10年以降に県内で完成した建物で、住宅、店舗など用途にこだわらず、新築、改築とも可。県内外から83点の応募があり、書類審査で7点をきのくに建築賞に選定した。  当日は、設計者がスライドで建物の内外を紹介しながら、どんな思いやコンセプトで取り組んだかを訴えた。続く審査会では、町の景観に対する建物の存在意義などについて審査員が意見をぶつけ合った。

 知事賞の有田市の「辻堂東の家」は、東西に細長く伸びた2階建ての住居兼事務所。2階南北面をガラス引き戸にして開放感を出し、周囲にベランダを配置し、町と住まいの適度な距離感が評価された。優秀賞は、「どこでも学べる場の創造」をテーマにした和歌山市の信愛中高新校舎と、築90年の民家を地域の人も使えるよう改修した田辺市の夢縁庵が選ばれた。

 島会長は「建築が町の景観にどう影響を与えるかを重視し、評価しました。今後も継続したい」と意欲を見せていた。

写真=作品のスライドを映し出し、建築コンセプトを説明した

(ニュース和歌山2016年9月3日号掲載)