心のバリアフリー高評価

 和歌山城を訪れた障害者や高齢者の登城を支援する団体「城プロジェクト」が11月、近畿運輸局のバリアフリー化推進功労者表彰を受けた。スロープなど設備の新設が難しい史跡で、ふれあいを大切にしたサポートが評価された。川島寛子代表は「不自由を感じている人とサポートできる人が思い合ってこそのバリアフリー。取り組みが街に広がれば」と望む。

階段も忍者が登城を支援_dc お城を訪れた人が気持ち良く城内をめぐれるよう、2011年に立ち上がった同団体。市の委託を受け、ヘルパー資格をもつ忍者姿のスタッフらが車いすやベビーカーを利用する人の登城を助けている(写真)。昨年の利用者数は高齢者や障害者が259件(初年45件)、ベビーカーは745件(同82件)と人気を集めている。

 心がけるのは利用者に寄り添うこと。お城の歴史や特徴を紹介し、暑さが厳しい日は日傘や保冷剤を用意するなど、きめ細かな心くばりが好評で多くの礼状が届く。「当初はいつでも、だれでも利用できる施設が良いと思っていましたが、実は少し不便な方が、ふれあいを生み出すことに気づきました。それが多様なニーズにこたえられ、和歌山城への愛着を高めています」と川島さん。

 今回の表彰は、他府県でも史跡のバリアフリー化が課題になる中、人の力で解決している好例として選ばれた。和歌山市和歌山城整備企画課の竹内駿さんは「エレベーターやスロープの整備だけでは、来城者との出会いは生まれない。もてなす気持ちが受賞につながった」。川島さんは「お城の景観と調和した形でこれからも続けていきたい」と意気込んでいる。

(2016年12月10日号掲載)