500gou- 5000の歩みで和歌山の魅力をさらに引き出せ──。本紙5000号企画で記者に課されたミッション(使命)だ。ならば、和歌山市のまちなかを巡る2コースを歩いてみよう。歴史体感コースは和歌山歴史地理研究会会長の水田義一さん、和菓子巡りコースは紀州の和菓子と文化を考える会代表の鈴木裕範さんを案内人に、いざ、城下へレッツゴー!(林祐司)

城と人の歴史たどる・歴史体感コース

20170121-6aa江戸時代の名残 今も

 歴史体感コースのスタート地点は、江戸時代、城下町と城内を結んでいた京橋。「橋を挟んで北と南。街の違いが分かりますか」。水田さんに聞かれ、景色を見比べてみるが分からない。「江戸時代は京橋御門があり、橋がかかる堀の南は大きな武家屋敷がありました。その名残りで今も大きな区画の建物が多い。また、南側の方が少し土地の標高が高いんですよ」。街の見え方が少し変わった。

 南へ進み、一の橋から城内へ。二の丸を横目に裏坂から天守閣を目指す。途中、城内を案内し、車いす利用者の登城を手助けする忍者に出会った。「天守閣の写真を撮るなら本丸御殿跡がオススメですよ」。確かに、本丸御殿跡から望むお城(写真左)はりりしく、格好の撮影スポットだ。

 天守閣前広場に到着。早速、チケット売り場へ向かおうとすると、水田さんが「こっちへ」と手招き。天守閣の土台となる石垣の周囲を歩くためだ。土台は城内で最も古い時期に造られ、豊臣秀吉の時代という。墓石や河原の石が使われているそうだ。

岡公園が石切り場?

 表坂を下り、岡口門を抜けて岡公園へ。江戸時代、百間長屋があった場所に今、別の場所にあった長屋門の移築工事が進められている。水田さんが注目するのは公園の池に向かって切り立つ岩場だ。「明らかに自然地形ではなく、築城初期はここで切り出した石を石垣に使った」という。見上げれば相当高い所まで岩が削られている。当時の土木技術の高さに関心した。

 公園の南に刺田比古神社。徳川吉宗が生後間もないころ、立派に育つための厄払い儀式として一度捨てられ、同神社の神主が拾い親になったと伝わる。子の健やかな成長を願い、筆者も手を合わせた。

20170121-6c紀州忍者 名取三十郎

 神社からさらに南へ。寺町通りに出て西へ向かうと、恵運寺に到着した。ここは紀州藩の軍学者、名取三十郎正澄の墓があることで知られる。三十郎は日本三大忍術伝書『正忍記』の著者で、国内外からファンが訪れる。山本寿法住職は「2月2日〜28日は忍者の特別ご朱印を用意しています。中でも2月22日は『ニンニンニンの日』として特別印も考えています。昨年は1時間待ちになるくらいの人が参ってくれました」と笑顔。「正忍記は人生観や生活の知恵も記されている。現代人が学べることもたくさんあるんですよ」

 和歌山城を中心としたまちなかは、奥深い歴史と、それらを紡いできた人々の思いが積み重なって成り立っている。それらを強く実感できるコースとしてオススメだ。

写真=墓前でご朱印を持つ山本住職

20170121-6b歴史体感コース案内人

 和歌山歴史地理研究会会長で和歌山大学名誉教授の水田義一さん…関西屈指の規模を誇る城下町と、江戸城の小型版と言われる和歌山城の魅力を味わえるコースです。時間に余裕があれば、戦前は国の重要文化財に指定されていた松生院もオススメです。建物は戦災で焼失しましたが、今は再建され、鎌倉期の日本と中国の文化が組み合わさった貴重な混合建築が復元されています。

【歴史体感コース】

歩 数:5314歩   消費カロリー:187㌔cal

難 度:★★★☆☆  歴史度:★★★★★  冒険度:★★★☆☆

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紀州銘菓グルメツアー・和菓子巡りコース

20170121-7a和菓子に〝新感覚〟

 和菓子巡りコースの発着点は和歌山市役所。「食べ歩くだけでなく、職人とのふれあいを通じ、城下町和歌山の和菓子文化を感じましょう」と話す鈴木さんの案内で、まず、庁舎西隣の紫香庵を訪れた。店主の須賀良和さん(写真右)はブラジル出身の日系2世で、12年前から店を構える。

 まんじゅうやイチゴ大福が並ぶ中、目を引くのが上生菓子。干支の鶏、リボンをつけたヒヨコ、節分の鬼など実に多彩だ。鈴木さんは「新感覚の和菓子を楽しめるのは須賀さんならでは。和菓子も一つのアートだということを教えてくれます」と力説。和歌山城の焼き印を押した「紀州太鼓」はもっちりした食感で食べやすい。須賀さんも「和菓子に親近感を持ってもらえるよう、地元素材や商品コンセプトに和歌山を取り入れています」とこだわりを語る。

20170121-7d愛され続ける饅頭

 店を出て北へ。中橋を渡り東に折れると総本家駿河屋の看板が見えてくる。紀州藩の御用菓子司だった歴史ある同店は、店内で食べられる茶寮がある(写真左)。上生菓子と抹茶のセットを注文。店員が丁寧にたてる抹茶のすっきりした苦みと、上生菓子の上品な甘さのバランスが良い。店内のガラスの向こうで本ノ字饅頭を作る様子も見学できる。松本和樹店長は「本ノ字饅頭は紀州藩の参勤交代でも携行されたと聞きます。今もその味は変わりません」。

 京橋を渡り、本町通りを南へ向かうと「あしべもなか」(写真下)で有名な鶴屋忠彦。屋号の鶴をあしらった大ぶりのもなかは、小豆、白、ゆず味と3色のあんが三等分で詰まっている。1つで3つの味とボリュームが楽しめ、店主の神田隆司さんは「片男波を詠んだ和歌にちなんで名付けました」。

 さらに南へ歩き、三年坂通りを東へ。屋形町交差点にあるのがふく福団子。こ20170121-7cちらは、自宅用の和菓子を多く取りそろえる。さくら餅、あべかわ餅、みたらし団子は全て86円。今はイチゴやみかんが丸々一つ入った大福がオススメだそう。イチゴ大福を購入し、ほお張った。ジューシーな果汁があふれ、果実の酸味が白あんの甘さを引き立たせる味に、思わずみかんにも手が伸びた。

 店を出て三年坂を上り、追廻門までひたすら歩く。可憐に咲く水仙に励まされながら、城内を抜けて市役所へと帰り着いた。「結構な運動になった」と自負していたが、鈴木さんから「大体おはぎ1つ分ぐらいですね」。巡る際は食べ過ぎにご注意を。

和菓子巡りコース案内人20170121-7f

 紀州の和菓子と文化を考える会代表で和歌山大学客員教授の鈴木裕範さん…帰り着く前に、紅葉渓庭園の茶室、紅松庵で休憩もできます。余力があれば、堀詰橋の近くにある石碑「表千家屋敷址」も巡ってみてください。

【和菓子巡りコース】

歩 数:5062歩  消費カロリー:178㌔cal

難 度:★★☆☆☆  歴史度:★★★☆☆  満腹度:★★★★★

 

(ニュース和歌山2017年1月21日更新)