海南、紀の川市が移住推進市

 和歌山県の移住推進市町村に18日、海南市、紀の川市、みなべ町が加わった。また、これまで過疎化が進む市町村が置く移住担当職員「ワンストップパーソン」を、同日までに県内全市町村が配置した。かつて和歌山への移住といえば、自然豊かな場所を求める人が大半を占めたが、近年は都市部への通勤を前提に、「便利な田舎」を求める人が増えつつある。県、市町村は流入増に向け、取り組みを進める考えだ。

 県内では2006年、過疎対策として紀美野町、有田川町など5町が移住者呼び込みを始めた。以来、移住推進市町村は徐々に増え、今回で21市町村。各自治体はワンストップパーソンを中心に、相談対応から住まい探し、地域情報の提供と、移住前はもちろん、生活を始めてからも支援に当たる。

 海南は大崎地区、紀の川は鞆渕(ともぶち)、麻生津(おおづ)など4地区の住民らが受入協議会を設けて対応。海南市産業振興課は「大崎なら和歌山市の市街地へも通勤圏内で、暮らしやすい」とアピールする。

 06年から移住者をサポートする紀美野町2017012802_ijyuuのきみの定住を支援する会には、年間100件以上の問い合わせが寄せられる。大半は旧美里町を希望するが、以前はほとんどなかった旧野上町も、ここ数年は10〜20件ある。同会は「通勤に便利な場を求める現役世代からです」と説明する。

 4年前に旧野上町中心部に移り住んだ東京出身の鈴木健太さんは、海南の会社に勤務。妻は旧美里町での農業を望んだが、通勤面を考慮した。「岩出、紀の川に出やすくて良い。庭の畑で季節の野菜を育てています。将来的には大きな畑を借り、本格的な農業も」と視野に入れる。

 一方、過疎地ではないが、和歌山市も昨年、ワンストップパーソンを配置した。移住フェアで、子ども医療費の無料化や教育環境の良さを紹介し、「住みよい地方都市」の宣伝に当たる。

 県内にはこれまで、ワンストップパーソンを介して691世帯、1257人が移住し、うち7割が定住。近年、空き家改修や起業への補助、40歳以下対象の奨励金を設け、現地体験会や都市部での説明会を充実させる。県過疎対策課は「目標は年間1000世帯」と定め、さらに移住者増を図る方針だ。

写真=通勤を考慮して便利な田舎へ移住した鈴木さん一家

(2017年1月28日更新)