2017021101_mega 和泉山脈の南側、和歌山市府中から園部に至る一帯に、2つのメガソーラー(大規模太陽光発電所)構想が持ち上がった。クリーンエネルギーで環境に優しい発電所として期待される反面、設置には大規模な森林伐採が避けられず、水害や土砂災害に対する治水への不安と共に、ソーラーパネルが並ぶことによる景観への影響を懸念する声もある。完成すれば、日本有数のメガソーラーとなるだけに、実施企業、地元、行政とも慎重に進める意向だ。

 予定地は、六十谷駅東側を流れる千手川の東西で、南には住宅地が広がる。東側の「(仮称)直川・府中太陽光発電事業」の事業主体は、東京の不動産開発会社でメガソーラーも扱うTKMデベロップメント。132㌶に出力76・6㍋ワットの発電所を構想する。同社は「予定通りなら、1万5000世帯分の電力をまかなえる」と話す。着手前に自然環境への影響に関する和歌山県の審査が必要で、3年ほどかかる。同社は「着手するかは、結果を見極めてから」と強調する。

 一方、千手川西側の「和歌山市(六十谷・園部・直川)太陽光発電事業」は、メガソーラーを手がける三重のサクシードインブェストメントが実施する。予定地は75㌶弱で、出力48・0㍋ワット。規模的に環境への影響審査は対象外となる。今後、各種開発許可を申請し、2020年の事業開始を見込む。

 両社とも2016年に、地元説明会を始めた。TKM〜の説明は、環境影響審査の方法や内容に関すること。具体的な計画策定は審査後となるためで、「実施が決まれば、豪雨に備え万全の対策をするのは当然」との姿勢だ。一方、サクシード〜は事業内容を紹介。パネル外側に幅30㍍の緑地帯を確保し、要所に治水用調整池を設置、また、事業は20年間を予定し、終了後は山林に戻す方針を明かした。

 地元住民の反応は様々だが、治水への懸念がある。サクシード〜予定地に近い六十谷第12地区の原明自治会長は「木は切るが、木の根は残すと聞いた。治水に問題がなければ、クリーンエネルギーでもあり反対ではない」。また、墓の谷行者堂への道がTKM〜の予定地を通ることで、行者堂を管轄する直川観音の西山一亨(とおる)さんは「以前も土砂崩れで道が寸断され、鉄砲水への怖さはある。ただ、メガソーラーが注目される中、無茶なことはしないはず」とみる。

 一方、有功地区の酒井武也連合自治会長は「安全面から、2つの発電所を一体のものと考える。計画の調整池で大丈夫か」と投げかけ、直川・畑地区の井畑太市自治会長は「上水道がなく地下水に頼る地区。維持管理に除草剤を大量にまかれると、飲み水の安全性が心配」と口にする。

 景観面では、和歌山市が昨夏、太陽光発電設備の設置に関するガイドラインを策定したばかり。反射光が市街地や集落に影響を及ぼさないことや、周辺緑化、目立たないパネル角度を求める。和歌山市都市再生課は「両社から事前に相談を受け、再生可能エネルギー推進面からも、事業と景観のバランスを取りながら進めたい」と話し、両社も「地元と協調してこその事業」との考えだ。

 和歌山県内最大メガソーラーは有田太陽光発電所で、出力29・7㍋ワット。TKM〜の発電所はその2倍以上で、構想通りだと、現在稼働中では全国4番目の出力となる。サクシード〜も有田の1・5倍。いずれも今後メガソーラーの指針となるだけに、成り行きが注目される。

写真=千手川を挟み2つのメガソーラー構想

(ニュース和歌山より。2017年2月11日更新)