特定外来生物(※)の植物ナルトサワギクが和歌山県内で分布を拡大している。小さく黄色い花は一見美しいものの繁殖力が強く在来種を脅かし、毒性があるため牧草にまじって家畜が食べると中毒を引き起こす。紀北では20年ほど前から見られるようになり、最近は観光客でにぎわう友ヶ島で群生を広げる。紀南でもここ数年目立ち始め、県は拡大防止の呼びかけを強める方針だ。

特定外来生物ナルトサワギク 繁殖力強く拡大の一途

 国内では1976年に徳島県鳴門市で初めて確認された。キク科で、原産地はマダガスカル。アフリカ、オーストラリアに分布し、埋め立て地緑化用に輸入されたシロツメクサなどの種に混入していたとみられる。

 1年を通じ、花を咲かせ種子を飛ばすため繁殖が早く、86年には淡路島、その後、大阪南部へと近畿で広がり、2006年には環境省が特定外来生物に指定した。

 県立自然博物館(海南市船尾)の内藤麻子学芸員は「最近は至る所で目にします」。海岸部や造成地、道路沿いの緑地帯など他の植物が少なく、乾燥した場所に多い。工事で土が替わった所でも強く、「特に開けた場所に群生しやすい。そういう所では在来種に影響が出る可能性がある」。最も懸念されるのは家畜への影響で、「毒性があり、牧草にまじると家畜に害があります」と話す。

 県内での繁殖は勢いを増す。熊野古道大辺路の保全を図る大辺路刈り開き隊隊長の上野一夫さんは「すさみと串本の間で増えた。すさみでは一部の海岸が真っ黄色に変わった。高速道路沿いの斜面、古道近くにも多い所がある」と語り、「高速道路南進に従い増えている印象。駆除を行ったが、追いつかない」。

友ヶ島、海岸部で増える群生 

 紀北では友ヶ島に群生が目立つ。100回以上の渡航歴がある観光ガイド和歌山の松浦光次郎さんは「5年程前から気になり始めた。最近は灯台周辺の広場、海岸、キャンプ場と広がる一方。『きれい』と言う人もいるが、島は古来から植物の宝庫。影響が心配」と懸念。

 県生物同好会の土井浩事務局長は「島は草の少ない海岸部が多く、内陸はタイワンジカが下草を食べ、増えやすい環境。駆除しても綿毛が散るので難しく、際限なく増え、島の植生になるのでは。豊かな自然が魅力なだけに残念です」と嘆く。

 淡路島では、特定外来生物指定後に対策を始めた。チラシで注意を呼びかけ、不定期で駆除を行う観光、環境団体もある。淡路市生活環境課は「気にかけ、駆除する人もいるが、減りはしません」。

 積極的に駆除を行う自治体は少なく、環境省近畿地方環境事務所は「法に反する点は啓発するが、自然に広がるものには手がついていないのが現状」。友ヶ島を管理する和歌山市観光課も「管理事務所職員が目についたものを抜くが、繁殖力が強く、追いつかない」。

 県は6月末にホームページで呼びかけ始めた。県自然環境室は「見かけたら、根ごと引き抜き、袋に詰め、抜いた場所で枯死させ、燃えるゴミとして処分してほしい。ぜひ協力を」と話している。

 ※特定外来生物=日本在来の生物の多様性を守るため、2005年に施行された外来生物法にもとづき、生態系や農林水産業へ悪影響を及ぼすとされる生物。ブラックバス、セアカゴケグモなど130種を超え、これらを飼育や栽培、野に放つと罰則が科される。

写真=友ヶ島の海岸部。見渡す限りのナルトサワギク

(ニュース和歌山/2017年7月1日更新)