おはなし一輪
迷子になったサチ
       
 サチがいなくなったのは5月3日午後9時ごろです。サチは昨夏に拾ってきた犬で、飼っているビーグル犬を散歩させているとなついてきて、飼い始めたのです。人にはなつかないので散歩は夜、近くの公園でさせていました。
 その日、サチは突然、グラウンドから飛び出しました。必死に探しまわりましたが見つからず、貼り紙を200枚作っていろんな所に貼り、散歩する人に声をかけ続けました。
 心配でした。ちゃんと食べているのか、雨に濡れていないか…。夜中に何度も目が覚めました。
 ゴールデンウィーク明けの7日、ニュース和歌山の皆さんコーナー「迷い犬、猫」欄に掲載してもらおうと訪れました。するとどうでしょう。サチの写真を見た1人の社員さんが「この犬、うちの庭にいました」。
 びっくりです。「身体に赤いハーネスをしていますよね」。間違いなくサチです。すぐその社員さんの家の近くを探しました。しかし、見つかりません。サチは臆病な性格で昼は活動しないのです。ですから、改めて午前1時ごろに付近を歩き、家の人を起こさないよう「サチ、サチ」と声をひそめて探しました。
 数日後、社員さんの家から「庭にハーネスが落ちていた」と電話がありました。サチのものでした。これでもうサチは野良犬にしか見えなくなる。目の前が真っ暗になりました。
 がっかりして近くを探していると、また電話が入りました。サチが今、そのお宅に戻ってきたというのです。あわてて駆けつけ、庭裏に回りました。「サチ、サチ」と呼ぶと、生垣から鼻を突き出してきました。飛びついてきたサチを私は強く抱きしめました。「もう逃がさない」と座り込みました。
 不思議です。ニュース和歌山の社員さんの家にいたのも、ハーネスを取りに行った時に戻ってきたのも……。探している時にみなさんが協力してくれ、人の温かみが身に染みました。本当に良かったです。ペットも家族ですから。    (和歌山市、雑賀美鈴)

写真=無事に戻ったサチ