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2008年、夢舞台へ
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 華やかなスポットライト、注がれる観客の視線、贈られる拍手と歓声・・・。幼いころから憧れていた夢の場所に立つチャンスを手にしようとしている若者たち。2008年、飛躍の時を迎えた3人にせまる。
自分の気持ち 歌で表現
モデル 岡本玲(16)
 小中学生向けの人気ファッション雑誌「ニコラ」の専属モデルとして小学6年から活躍し、表紙を飾った回数は歴代1位。さらに今年はCDデビューを3月に控える。自ら手がけた歌詞には故郷和歌山への思いや、同世代の若者の気持ちを織り込んだ。「和歌山の自然があるから今の自分がいる。和歌山代表として活躍することが故郷への恩返しにつながる」と08年、更なる飛躍にかける。
 自然に恵まれた和歌山市東山東で生まれ育った。四季の郷公園や周辺の山中で木登り、ザリガニ釣り…。「おてんばな少女でしたが、楽しい思い出がたくさんつまっています」と振り返る。
 小学3年のころ、2歳上の姉が買っていたニコラを手にした。開くと、かわいい服やアクセサリーで着飾った女の子でいっぱい。流行の髪型やブランドなどがページを彩っていた。「服がほしい」ではなく、「ニコラに載りたい」と強く思った。
 「モデルのオーディションに応募したい」。小学6年の時、両親に言った。「無理だろう」と言われたが意志は強く、母に写真を撮ってもらい応募。全国から集まった約6000人から7人だけが選ばれるモデルの座を射止めた。
 中学を卒業するまでは、週末東京へ通い撮影。流行を先取りして服を着られることがうれしく、地方出身のモデルが周りに多かったため、話が弾み、ハードスケジュールも苦にならなかった。努力が実り、初めてニコラに自分が載ったのを見た時、流行の服で身を固め、メイクもバッチリきめた姿に、「和歌山で遊んでいた自分と違うなぁ」と感じた。と同時に、恥ずかしさより嬉しさが胸を占めた。表紙を飾ること23回。ニコラの先輩である沢尻エリカや蒼井優、新垣結衣を上回り、同誌を代表するモデルになった。
 昨春、進学を機に上京。意気込んで乗り込んだものの、和歌山との話し方や雰囲気の違いもあり、周りは大人ばかりで分からないことだらけで戸惑った。仕事、学業の両方でマイナス思考になっていたある日、体調を崩して保健室で休んでいると友人が見舞いに来てくれた。「自分を思ってくれている人がいる」。素の自分を出せるようになった。
 ブログには、ファンからの応援メッセージや励ましの言葉が多数寄せられている。自分で感じた言葉やファンからのメッセージの中で、共感した言葉をつづる「キモチノート」を昨春から始めた。ノートには愚痴や心の中にある疑問も書き込む。デビューシングルは自ら志願して作詞を担当。「みんなの気持ちと自分の気持ちが一体となった」言葉を詞に織り込んだ。レコーディング時には思うように声が出ず苦しんだが、納得できるまで録り直しをスタッフに頼んだ。「若者の心の叫びを元気にかっこよく歌っています」
 CDデビューは3月。「全国を巡り、直接手渡して感謝の気持ちを伝えたい。不安な時や辛い時は和歌山の風景をよく想い出す。高い建物がなく、星がよく見えた。疲れた時や友達とケンカした時はよく空を見た。気持ちが前向きになり、落ち着くんです」
 活躍の場を広げる16歳の前には、ふるさとの空のように大きな未来が広がっている。岡本玲HP(http://www.okamotorei.com/)。
      
ステージで“魅せる”
ダンサー NANAKO(26)
 音楽に合わせ、表情を変えるしなやかな体-----。クラブシーンで抜群の実力を誇るダンスチーム「OH GIRL!」のメンバーだ。倖田來未、MISIA、中島美嘉…今をときめくアーティストのライブやプロモーションビデオで、ダンサーを経験。チームの一員としてイベントで舞台に立つ一方、レッスンでインストラクターを務めるなど多方面で活躍する。「小さな枠にとらわれず、もっと広い視野で活躍していきたい」とさらに先を見据える。
 和歌山市で生まれ育ち、ジャズとヒップホップに出合ったのは15歳のころ。それまで触れてこなかった世界だったが、直感的に「私に向いてる」と感じた。幼いころから両親の影響でミュージカル、コンサート、映画に触れ、5歳からクラシックバレエを習っていた。「今から思えばそういう環境が、表現力や感受性を養ってくれたんだと思います」
 高校時代は、和歌山と大阪で3つのスタジオに通った。10年間バレエで培った基礎が生きた。振り付けや技術を身に付けるのが早く、「先生から『吸い取り紙みたい』と言われたこともありました」と笑う。
 高校卒業後、プロのダンサーを志し上京。迷いではなく、自信があった。恵比寿のスタジオに通いながら、真夜中のオフィスビルの正面玄関前、窓ガラスを鏡代わりに練習を重ねた。そして、渋谷のクラブを中心にイベントやショーに出演するようになった。
 2002年、「OH GIRL!」結成。互いを必要として集まった4人を、「どのダンサーよりも尊敬してる」と言い切る。胸にあるのは、ダンスを通して本当に大切な仲間に出会えた感謝の気持ちだ。様々なコンテストに出場、入賞を重ね、〇四年には「MTVアッシャーダンスコンテスト」で優勝。ダンスの世界に「OH GIRL!」の名を知らしめた。
 人気とともに、ダンスは「趣味」から「仕事」へ。本名の西田菜々子ではなく、プロのダンサーNANAKOとして、観客に感動が伝わるステージを“魅せる”。「ダンサーはアスリートに似ている。肉体的にも精神的にも強くないと」との言葉には、華やかな表舞台の裏にある、ストイックな姿と絶え間ない努力が見え隠れする。
 昨年(2007年)9月、メンバーのNaNaさんが歌手デビューした。そのことを自分のことのように喜ぶ。ダンサーで参加し「今はNaNaのバックアップに力を注ぎたい」。今までダンスを続けられたのは、いつも支え合ってきた大切な仲間がいたからだ。
 昨年末には、ふるさとへの感謝の気持ちを表したいと、和歌山で初めてワークショップを開いた。東京で得たものを伝え、和歌山のダンスシーンを盛り上げていくことが、恩返しになれば-----。「2回目、3回目と続けていきたい」と意気込む。
 ダンスから学んだもの。それは楽しさ、悔しさ、そしてたくさんの感謝の気持ち。「ダンスは生きている意味を教えてくれるもの」。たくさんの思いを込めて、ステージに向かう。
      
今感じること まっすぐに
ミュージシャン 藪下将人(26)
 アコースティックギター1本で聞かせる、のびやかで透明感のある歌声は、幅広い年齢層に支持が広がり、今や和歌山のストリート・ミュージックを引っ張る存在に成長した。昨年(2007年)は数多くオーディションに挑戦し、年末の「けんぶんまるかじり」では『がんばれ故郷』を歌い、グランプリを獲得。春にもCD化される同曲を足がかりに飛躍を試みる。「今は生活している一秒一秒が面白い。昨年より勢いのある自分を出し、強い期待を集めたい」とまっすぐ前をみすえる。
 2000年3月、友人とのユニット「春歌」で路上デビューした。午後10時を過ぎても人通りの絶えないJR和歌山駅前。緊張したが、自分たちの歌声に足を止める人が目に入った。何度も路上で歌ううちに自分たちを目的に人が集まり始めた。「めちゃくちゃうれしかった」。ゆずのコピーからオリジナル曲が増え、コブクロや桑名正博の前座に声がかかった。
 「僕はガンガン行きたいタチ」。大阪に拠点を移し活動を展開していたが、プロ志向の強い自分自身と友人との間に温度差が生じ、02年に解散。ソロとなり、大阪や和歌山でライブをこなした。
 04年、大阪のプリズムミュージックフェスでグランプリ。翌年には宮本恵梨菜さんと組み、和歌山音楽祭でグランプリに輝いた。昨年はソロで、全国規模のストリートミュージックオーディションに出場。グランプリは逸したが、250組のうち最終4組に残った。「プロをめざすなら、それぐらいで満足していては駄目」と決して妥協はしない。
 音楽的な影響は「1990年代に売れていた音楽。歌謡曲」と言う。「ビーズやT-BOLAN、特にチャゲ&飛鳥が好きでした。テレビから身近に聞こえてくる音楽が好き」
 持ち歌は60曲。これまで『Self』と題したCDを2枚出している。お気に入りは『空』だ。「空が好きやなあと見上げたら、できた」と笑う。リズミカルでキャッチーな曲はライブでも人気を集める。「その時、いい!と思ったことを曲にする。時代は流れていくので、今感じたことを出せば時代が出る」
 昨年、和歌山の情報誌に“アコースティック王子”とネーミングされた。さわやかな風貌と素直な心情をストレートに歌うスタイルは確かに“王子”を思わせるが、本人いわく「毒も吐きます」。
 ライブで、「努力なんてものは報われないのが前提なのさ」と歌う曲『努力するな』に続けて「君のがんばりが報われる日が来るさ」と『努力しよう』を歌い、会場をどよめかせる。「口当たりのいい曲だけでなく現実の2面性を示したい。聞いている人に『思ってることを言ってくれた』と思ってもらいたい」
 昨年末の「けんぶんまるかじり」でグランプリを得た『がんばれ故郷』のCD化を春に控える。「頑張れ 頑張れ 変わらないところが素敵じゃないか」「この街にうまれて良かったなって思えるようにしていこうら」と故郷和歌山を讃え励ます。
 「この曲で次のステップにつなげたい」と淡々と語り、「音楽を通じ、自分の未来を想像できることが楽しい。先を楽しく思えると、今が楽しくなる。楽しいと思える限りは続ける」。言葉によどみはない。

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 1月5日(土)午後6時半から、和歌山市北ノ新地の「ミュージアム・カフェ・ヴィンテージ」(元ラバーソウル)でライブがある。