心身の健康に紀州材
 和歌山では34年ぶりとなる全国植樹祭が開かれる今年。太古から木を祀り、木を敬い、林業を生業としてきた紀州人は木と共に歴史を歩んできた。今、その紀州材の魅力を見直す動きが広がっている。今回は元“気”をくれる木としての紀州材に注目し、取材した。
県林業試験場木材利用部
副主査研究員 岸本勇樹
強度高く癒し効果も
 和歌山県は県土のおよそ77%が森林であり、古くから林業が盛んに行われてきました。地域の伝統ある確かな林業技術によって生産されるスギやヒノキは、優良な紀州材として親しまれています。
 紀州材は強度に優れて色合いや艶が豊かであるとされ、和歌山県林業試験場で実施した住宅構造材の曲げ強度試験結果でも優れた強度性能を示すことがわかりました。また、建築材として安心して使えるばかりでなく、木材が本来持つ優れた特性を兼ね備えています。
 木材はもともと人が快適に感じるものとして認識されており、最近の科学的な検証のなかで生体をリラックスさせる効果があることがわかっています。スギ材やヒノキ材の香り成分は脳波に働きかけ、安静時に現れるα波を増加させ、緊張時に現れるβ波を減少させる作用があります。香り成分として含まれるα-ピネンには睡眠時の疲労回復を早める効用のあることも知られています。
 さらに触感にも好影響を与え、手や素足に触れたときのぬくもりや木目に起因した凹凸が私たちに心地よさをもたらすといわれています。その他にも、吸放湿性を生かした湿度調節機能など、多くの場面で私たちの暮らしと健康に良い影響を与えています。
 このような多くの利点を備えた紀州材は近年、学校や福祉施設といった公共施設をはじめとしたさまざまな場面で使われています。今後も、紀州材の多方面での活用が期待されます。
木製マシンで介護予防
     ネイチャー・コア・サイエンス
 木の持つやさしいイメージを生かして運動への抵抗を取り除き、介護予防につなげたいと、日本初の木製筋力トレーニングマシンを企画、販売するのが海南市南赤坂のネイチャー・コア・サイエンス。前真司代表は「お年寄りにとって木はなじみ深く、やわらかい印象。紀州ヒノキを使ったトレーニング器具で、継続して運動してもらいたい」と願う。
 2004年設立の同社は、自治体向け健康管理システム開発のほか、大学教授らと連携しながら健康づくり教室の企画・運営などを手掛ける。教室では間伐材で作ったブロックやダンベルを使い、簡単に取り組める運動を紹介してきた。
 06年、介護保険法が改正され、介護予防も給付の対象となった。「お年寄りが気軽に使えるトレーニング機器はないか」。介護施設からの声を元に開発したのが、木製筋力トレーニングチェア「ゆらぎ」(写真)だ。足を伸ばす、曲げる、股関節を閉じるの3つの運動が可能で、トレーニング部分は座面下に収納できるため、普段はいすとして利用できる。
 木を使う利点は、高齢者に与える安心感。「介護が必要な人は運動嫌いな人が多く、ジムにあるような鉄製のマシンには抵抗を感じてしまう。見た目が優しい木なら、運動を始めやすい」。導入する施設では複数並べ、テレビを見ながら、あるいはおしゃべりを楽しみながら運動する光景が見られる。小型で軽く、個人からの注文も多い。
 「森の音」(もりのね)と名付けた木製トレーニング器具シリーズは現在、ブロック、ダンベル、チェアの3種類で、現在は背筋が鍛えられるチェアなど新商品を準備中。いずれも材料に紀州ヒノキを使い、地元の家具職人に依頼して製造する純和歌山産だ。
 「木の国と言われる和歌山は、ヒノキの蓄積量が日本一。外国産の木材に押され、林業は苦しいですが、紀州ヒノキを使った商品が売れるようブランド力を上げ、和歌山で山の手入れが進む環境に持ってゆければ」と前代表。高齢者はもちろん、ふるさと和歌山の森の健康回復を切に願う。
 詳細はHP。同社(073・484・2121)。

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木にふれハツラツ
     水軒の浜 健康遊具ずらり
 水軒の浜に松を植える会が中心となり整備している和歌山市西浜の「水軒の浜」に昨年11月、紀州材で作った健康遊具が並ぶ「健康ひろば」が設置された。
 一帯は、同会と西浜中学同窓会「浜友会」などがかつて市民に親しまれた「水軒の浜」の面影を後世に残そうと砂地を掘り起こし整備。西浜中学の生徒と松を植え、白砂青松の復活を試みている。昨年は一帯に広がる江戸時代の石垣堤防「水軒堤防」の石垣を県が同地に再現した。
 「歴史公園であり、健康推進を図れる場にしたい」と松を植える会の奥津尚宏さん。ドッグランや枕木を使った遊具に加え、県の紀の国森づくり基金を活用し、紀州ヒノキの間伐材を使った健康遊具を8台設置。今も数台を手作りしている。背のばしベンチ、腹筋ベンチなどのほか、平均台、腕立てボードと多彩だ。
 いずれも木の感触が身体に優しく、植える会の新井守正さんは「背のばしベンチが人気。もたれて背中を伸ばすと気持ちがいい」。浜友会の加藤博之さんは「木のぬくもりがなにより。間伐材の利用が叫ばれるなか、遊具にふれて木の良さを知ってもらいたい」と話している。 

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五感で感じる木の魅力
     白樫木材が積み木
 ヒノキの香りに包まれて積み木が楽しめる「ひのきくん」を和歌山市築港の白樫木材が製造、販売している。白樫啓一社長は「木の優しい質感や香り、打ち合わせた時の音など、五感を使って木の魅力にふれられる。高齢者のリハビリにも使われています。世代を越えて楽しんでほしい」と話している。
 無公害塗料や自然素材が由来の断熱材を取り扱う同社。これまで、アレルギーやシックハウス対策の勉強会を開いてきた。
 自然な形で木にふれてもらおうと「ひのきくん」を2008年に開発。一ピース8ミリ×24ミリ×120ミリの木を大量に作り、自由に創作できるよう配慮した。
 匂いを損なわないために着色せず、木の質感と香りが楽しめる。「まっすぐきれいな切り口となめらかな木の質感を、均一な品質で作るのは技術が必要なんですよ」と胸を張る。
 手先が不安定な高齢者も楽しめるよう、一回り大きいサイズも開発。白樫社長は「木造住宅で暮らしていた高齢者は木への愛着が深く、ヒノキの香りがするとニコッと笑顔になる。それだけでも十分リハビリになるし、楽しく日常的に指先と頭の運動ができます。国産材の有効活用と将来への希望を込めた商品です」と話している。
 8500円。詳細はHP。同社(073・422・6011)。

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園芸福祉に立体花壇
     ヒューマンケアキタデ&中津村森林組合
 楽な体勢で園芸が楽しめる立体花壇を紀州材で------。介護事業を行うヒューマンケアキタデ(御坊市)と中津村森林組合は2005年、高齢者や障害のある人が安全に園芸を楽しめる立体花壇を開発した。同社の川崎裕介さんは「自然の中で五感を働かせることは高齢者にとって特に大切。立体花壇は作業中に転倒する危険性が低く、外へ出るきっかけになります」と話す。
 植物の生育を見守り、自然にふれることでリハビリにつなげる園芸療法。紀州材で作る立体花壇は、県内で初めて園芸福祉士の資格を取得した日高町の井上純さんらが発案した。紀州材の間伐材を有効利用しデザイン性の高い立体花壇だ。
 80センチ×60センチ×高さ75センチで、高さは3段階に変更可能。木の枠の中にプランターを入れたり、直接土を入れて植物を育てられ、枠の一部を外すことができるので土の出し入れが容易だ。
 同組合の上杉敦人さんは「福祉施設からの注文が多く、室内外で利用されています。木の香りが良いと好評」と話す。
 御坊市湯川町財部の認知症対応型デイサービス「コミュニティケアキタデゆうゆう」では庭に4台設置した。「花壇は手すりがないので一人で立ち上がれなかったり、座り込んで作業をしていました。立体花壇は立ったままでも車いすでも作業ができるので喜んでいます」と職員。
 園芸福祉士の井上さんは「植物を育てることで気持ちが前向きになる。太陽の光を浴びて外の空気を吸うことは健康づくりには欠かせない」と話している。
 3万円。同組合(0738・54・0701)。

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ニュース和歌山2011年1月3日号掲載