和歌山のお産は今(11)
産科医療危機 乗り切るには
和歌山県立医科大学周産期部講師南 佐和子
    
 10回にわたり、和歌山県の周産期医療の現状について連載してまいりました。確かに分娩を取り扱う施設は減少し、医師1人当たりの仕事量は限界に近くなっています。では、どうすればこの危機を乗り切ることができるのでしょうか?
 医師を増やすことが根本的な解決策ですが、1人の新しい医師が十分な医療活動を行えるようになるには時間がかかります。少ない医師がチームを組んで協力しあうことで何とかこの危機を乗り越えられるよう、私どもは和歌山周産期医療ネットワーク協議会を立ち上げ、周産期の問題点について話し合っています。
 分娩施設の数は急には増やすことはできませんが、お産を扱わなくなった先生方に妊婦健診をしていただくことはできます。いわゆるセミオープンシステムです。夜間の急なトラブルに分娩施設が対応することで、妊婦さんにも安心して健診を受けていただけるよう協力体制を作るようにしました。また、分娩施設の助産師による指導や母親教室に参加することにより、分娩施設になじむことができるでしょう。このように診療所と分娩施設が協力することで、分娩施設の外来業務が軽減されると考えます。妊婦さんもより近くの施設で健診が受けられます。協議会ではこのセミオープンシステムを推進していきたいと考えています。
 日本赤十字和歌山医療センターや県立医科大学は第3次医療施設で緊急の母体搬送に対応する必要があります。中でも県立医大は近年満床になることが多く、緊急搬送に対応できない場合もあります。これは和歌山県として憂うべき事態です。万全の周産期医療体制を整えるため県立医大では若干の正常分娩の調整をせざるを得ないことをご理解いただきたいと思います。
 また、妊婦さんも医者任せにはせず自身の管理をしっかりしていただきたいと考えます。今、問題となっている未受診(どこの病院にもかからずに陣痛が始まってから救急車で病院に搬送される)など、妊婦さん自身のモラルも問われています。分娩費用を支払わない方もいます。こういったモラルの低下が周産期医療体制をさらに悪化させていることをご理解ください。
 安心・安全のお産は医師1人にゆだねられるものではないのです。社会が安全にお産のできるシステムを作ると同時に、妊婦さん自身も体調に留意し、健診を受け、医師の指示や助産師のアドバイスに耳を傾ける。双方の努力の元に安心・安全のお産は成り立つものと考えます。皆さんに元気な赤ちゃんを産んでいただけるよう、われわれ産婦人科医は努力を惜しみません。それがわれわれの願いでもあるのですから。