またしても「佐々木小次郎」(昭25・東宝・稲垣浩監督)で恐縮だが、早大教授で江戸文学の大家・興津要先生が、こんな裏話を寄せてこられた。先生が市川右太衛門ら映画人と会合の帰途、たまたま家が同じ方向だったので、稲垣監督と車にご一緒にした時、監督いわく、あの「佐々木小次郎」は、実は東映の東千代之介で撮りたかったのだが、どうも交渉がうまくゆかなくて……と、しみじみ述懐されておられたとのことだった。世に知られざる裏話を、興津先生、どうもありがとう。
きょうは「腰抜け二挺拳銃」(昭23、米、ノーマン・Z・マクロード監督)である。ボブ・ホープの喜劇はみんな「腰抜け」が冠されているので、シリーズかと思っていたら、これが全然シリーズではなかった。その中でも、この作品がいちばん面白かったと定評があった。
これより先に制作されて、日本での公開があとになった「シンガポール珍道中」(昭15、米、ビクター・シャーツィンガー監督)など、ビング・グロスビーとボブ・ホープ、それにグラマー女優のドロシー・ラムーアが主演した珍道中ものも面白かったが、やはりおもしろさではシリーズならざるこの「腰抜け」シリーズ、特に「腰抜け二挺拳銃」がいちばんだった。
正直なところ、この映画、あのバッテンボーで有名な主題歌「ボタンとリボン」がヒットして、私たちも口ずさむようになり、映画を見たのはだいぶん後のことだったように思う。民謡のはやしのようなバッテンボー、実はボタン・アンド・ボウスだった。
ボウはリボンの蝶結びのことである。西部に向かう幌馬車の中で、アコーディオンを奏でながら歌う「ボタンとリボン」。あんな喜劇俳優と思えないほど、ボブ・ホープは声もよく、歌もうまかった。
「腰抜け二挺拳銃」に西部の姐御で出てくるのが妖艶なジェーン・ラッセルである。私より1歳年上だったのでよく覚えているが、今も健在だろうか。
西部を回っている新米の歯医者ピーター・ポッター(ボブ・ホープ)が、インディアンに武器を横流しする一味を探索する密命を帯びた女賊のカラミティ・ジューン(ジェーン・ラッセル)と知らずに結婚して旅を続け、インディアンの来襲に、密売団の撲滅に、無法者相手の決闘に、珍無類の大活躍をする大喜劇。まさにボブ・ホープの独壇場だった。
とにかく、ボブ・ホープは楽しかった。そして私もまだ若かった。(参照 昭61・12・31関西テレビ放映「腰抜け二挺拳銃」)
〈写真=「腰抜け二挺拳銃」のボブ・ホープとジェーン・ラッセル(右)(キネマ旬報より)
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