城下町の風景 〜カラーでよむ『紀伊国名所図会』〜
画=岩瀬広隆、彩色=わかやま絵本の会・芝田浩子
武術の見物スポット(15)扇の芝

 和歌山城の砂の丸から追廻門を外に出ると、高石垣沿いに三年坂へ向かう道と今の県庁前交差点へ向かう道がありました。その間のお城の南西隅にある芝を植えた土地は、その形から扇の芝と呼ばれました。後に8代将軍となった徳川吉宗は、誕生した時に健康を願って、ここ扇の芝に捨てられ岡の宮の神主に拾わせて、幼少期を加納家で育てられたという逸話があります。
 扇の芝の前は、南北約350メートルの細長い馬場となっていました。上の絵のように、藩士は馬に乗りながら弓を射る、流鏑馬(やぶさめ)の練習などに励みました。馬場に沿って、その東側には少し根が上った松並木があり、木陰で藩士たちの武技を見物する老若男女の姿がたくさんあります。ここは、庶民が武術を最も身近に観られるところだったのでしょう。
 扇の芝からは、高石垣と連立式天守閣がよく見えました。現在は、馬場と扇の芝の大半が国道26号の道路敷と商業地になっています。(和歌山市立博物館主任学芸員 額田雅裕)