城下町の風景 〜カラーでよむ『紀伊国名所図会』〜
画=岩瀬広隆、彩色=わかやま絵本の会・芝田浩子
花樹と松に囲まれた鶴ノ渓
(21)檜椿(ひのきつばき)の図

 上の絵は、約160年前に和歌山城砂ノ丸の鶴ノ門から鶴ノ渓をみた風景で、『紀伊国名所図会』の中で唯一、内郭をえがいたものです。ここへ行けば、今日でもほぼ同じ風景をみることができます。
 鶴ノ渓の名前は、今から約400年前の浅野時代に、ここで鶴が飼育されていたことに由来します。右下には水生植物がはえる池があり、「つるの餌入」がえがかれています。鶴の餌鉢は現在、天守閣に展示されています。
 鶴ノ渓の正面には二ノ丸の建物、切手御門とその続きの櫓がみえます。左側は西ノ丸(紅葉渓)庭園で、白壁の土塀に沿って檜椿が植えられています。檜椿は八重と一重があり、春に赤と白の花をつけます。右側の石垣は野面積みの青石(緑色片岩)で、その上には山吹が繁っています。
 今はうっそうとした広葉樹の森になっていますが、当時の鶴ノ渓は鮮やかな色の花が咲く樹木や松林に囲まれていました。(和歌山市立博物館主任学芸員 額田雅裕)