和歌山市の紀伊や川永、山口地区で高齢者が地域で気楽に集まれる居場所づくりが進められています。取り組むのは社会福祉法人の喜成会で、地域福祉推進室生活支援コーディネーターの門脇次彦さん(54)が現場を担います。

 川永では月2回、ふれあいカフェを開き、また月1回、サロン活動として近隣5地区に会場を借り、お年寄りが集まってお茶を飲み、世間話を楽しめる一時を設けます。

 現在は、市からの委託事業として他地区でもモデルとなる居場所づくりに力を入れ、山口で「健康カフェ」を実施。続いて3月に紀伊で「歌声カフェ」を、5月には川永自治会館で、子ども食堂を発展させた「みんなの食堂」の立ち上げに動いていました。しかし、新型コロナウイルスの感染拡大で取り組みは中止や延期を余儀なくされています。

 「ふれあいカフェも最初は様子を見て休もうと話していたのが、みるみる深刻化し、先が見えません」。ふれあいカフェは多い時で参加者は1日50人に及び、遠くから来る人もいました。門脇さんが気になるのは、感染防止のために直接接触を避けたがゆえに生まれる別のリスクです。

 カフェなど集まりには、家族とも縁が薄く、独居で携帯電話も使わないお年寄りも来ます。心配な人ほど連絡がとりにくくなるのが現状で、「ここだからこそ、歩いて来てくれるという人がいます。行き場がなくなり、体力や筋力は大丈夫だろうか。気になります」と嘆きます。

 防災はつながることが命を守り救うことになりますが、今回のようなパンデミックは「会わないまま、どうつながっていられるか」という課題を浮きぼりにしました。日常的に顔を合わせるのに加え、ゆるやかでももう一つのつながりの層をつくる試みを私たちは考えてゆかねばなりません。門脇さんは「長期化すると、対応を考えねばなりません。今は早い収束を祈るばかり」と話します。

 コロナは経済的な問題だけでなく、普段は見過ごしがちな、つながりの希薄さゆえに生じる影を私たちに見せつけます。いきなり対策と大上段に構えなくとも、身近で困っている人に何ができるかを考えるのがまず大切でしょう。感染防止はむろん、より豊かな未来を生むふるまいを選びたいです。 (髙垣善信・ニュース和歌山主筆)

(ニュース和歌山/2020年5月2日更新)