音楽は人間に必要か?

 音楽は人間に必要だと私は思います。感動的なライブを見た直後の来場者から「音楽は言葉よりも先にあったと思う」と聞いて納得しました。そのライブは神や霊魂が乗り移った祈りのような、時には儀式のようなライブでした。

 言葉のない時代に音楽があったと考えると、人間は音で共有し共感したのでしょう。実体験として、海外旅行などで言語や人種が違っていても、音やジェスチャーでコミュニケーションがとれた経験があります。

 また、盆踊りの楽しみ方や踊り方を知らなくても、物心がついた時には、祭りの笛や太鼓の音でテンションが上がっていました。音楽も祭りもダンスも表現として、コミュニケーションツールとしては一緒です。

 脈々と継承されている祭りがある地域は人と人とのつながりが強い。それは地域主義の表れで、誇りを持って後世に伝承してきたからです。

 自粛が長引けば、祭りのオンライン化も進むでしょう。オンライン化した場合に期待しているのが、踊り方や歌い方など、いままで口伝えだったものが、映像や画像で残ることです。音響の仕事の際、和歌山市内の盆踊り保存会の方たちから、人が亡くなり、途絶えたイントネーションや歌い方がたくさんあると聞きました。

 過去の記録を動画として残していれば、いつでも子どもたちに映像で伝えられます。地元愛と共に文化を伝承する教材として非常に有効です。

 今後、オンラインで興味を持ってもらい、生の体験をしたいと思うきっかけになるサービスを提供できれば、エンターテインメントの活路はあります。オンラインの普及により、密集を避けた場所での生演奏や生の体験の価値が上がり、今までよりも単価や対価が高くなっていけば良いでしょう。

 持論ですが、祭り好きな方は地元愛にあふれた情熱的な方が多いです。祭りが盛り上がれば地域経済も潤う。来年の和歌祭が楽しみです。

 一方で今年は自分の子どもに盆踊りや祭りを体感させてあげられないのがとても残念です。そんな中、お盆期間中に開催されているマリーナシティの花火がとてもうれしいです。私は人混みを避けて、対岸にある和歌浦のバグースから先祖の事を考えながら花火を楽しみたいと思います。

(ニュース和歌山/2020年8月15日更新)