人気映画シリーズ『ゴジラ』の第1作目上映と、同作で主演した宝田明さん(85)による講演会「ゴジラ和歌山上陸! 宝田明さんと考える『平和』〜これまでとこれからと」が8月25日㊐、和歌山市民会館で開かれます。主催する和歌山G&Tプロジェクトメンバーで、ゴジラと原子力、平和について研究する和歌山信愛女子短期大学教授の伊藤宏さん(56)に、今回の企画に込めた思いを尋ねました。

原発政策に疑問

──専門は。

 「メディア論やジャーナリズム論で、メーンは原子力報道の検証です。元々、共同通信の記者で、入社した1986年にチェルノブイリ原発事故が起きました。青森の六ヶ所村で核燃料再処理工場の視察に来た電力会社社長を取材した時、フェンスの外で警備員に制止される反対派住民を目にし、取材とは言え、フェンスの内側にいた自分に違和感を覚えました。記事でも、『住民が抗議に来た』程度の紹介で、実際に起きたことを伝えきれず、原子力政策やメディアの在り方に疑問を抱くようになりました」

──その後は。

 「原発問題に専念しようと退職。『下北半島新聞』を立ち上げ、住民の声を拾って回りました。フリーで活動を続け、35歳で大学院に入り、原子力報道を研究しました」

第1作目は特別

──研究室はゴジラの人形であふれています。

 「フィギュアなど300点以上、ポスターや映像資料もあります。小学校低学年のころ、映画館で初めて『ゴジラ』第1作目を見ました。1度見ただけなのに、セリフや場面を鮮明に覚え、しばらくゴジラに追いかけられる夢ばかり見ました。怖いけど、すっかりファンになりましたね」

──その魅力は。

 「ゴジラが恐ろしい水爆大怪獣として表現された第1作目は特別。ゴジラ誕生の54年は、ビキニ環礁で第五福竜丸が被ばくし、日本政府が原子力を平和利用する方針を決めた年です。当時、広島、長崎への原爆の記憶も新しく、原子力、核兵器、政治、科学技術と倫理などの問題提起が作品に織り込まれています。人類に有益であれば平和利用、不利益であれば軍事利用という点で、原子力とゴジラは重なります」

平和考える機会

──今回、宝田さんが来和されます。

 「満州生まれの宝田さんはソ連軍の銃撃を浴び、日本人が暴行される光景を目の当たりにし、平和を強く願っています。原子力や平和を意識していた当時の撮影現場の様子や戦争体験が聞けると思います」

──当日に向け一言。

 「第1作目を大迫力のスクリーンで鑑賞し、第五福竜丸が建造された和歌山の子どもたちに、平和や原子力について考えてもらいたいですね」

ゴジラ和歌山上陸!

 8月25日㊐、和歌山市民会館。
 午前11時と午後4時に『ゴジラ』上映、2時から宝田さんの講演。伊藤さんのコレクションも展示。
 1500円、大高生1000円、小中学生500円。同館ほかで取り扱い。音楽愛好会フォルテ(073・422・4225)

(ニュース和歌山/2019年8月17日更新)