三年坂に面する一際高い石垣は、城内駐車場入口にそびえる南ノ丸櫓台で、通称「高櫓台」と呼ばれています。『紀伊国名所図会』にも行き交う町の人々を前に、高く頑丈な石垣の姿が描かれています。

 岡口門近くにある松ノ丸櫓台(2回目参照)と同じで、隙間なく積み上げられた切込接ぎという工法で、天頂部へ行くほど勾配が急になる「反り」のある構造になっています。忍者も登れない急峻な構造から「忍び返し」「武者返し」とも呼ばれたりします。松ノ丸櫓台ともに、築城の名手、加藤清正が得意とする積み方であることから「清正流」とも言います。

 高櫓台は、徳川頼宣が拡張した一角で、砂ノ丸から続く高石垣の東端にあたり、高さ16㍍あります。ここに登ると南側だけでなく東、西と一帯を見晴らすことができます。好天時には、東に龍門山(紀州富士)を望むことのできる当場所に立てば、三年坂に沿う堀と並んで南の防御を鉄壁にしようとした狙いをうかがうことが出来ます。

 さらに当櫓台には、大変興味深いものを見ることが出来ます。櫓台の柵まで近づき、東・西・南側の角を見れば、蝶ネクタイのような穴が残っています。これを「チギリ(チキリ)彫り」と言い、その穴に鉄や鉛などで作ったチギリをはめ込んで、天端石(最上部に位置する石)の角石同士を接続し、安定度を高めたものです。現在、チギリは、先の大戦時に徴集されたのでしょうか、現物はなく、その穴しか見ることはできません。しかし、夏場は草が覆い隠してしまって見づらいので、冬枯れ時の見学をお薦めします。(水島大二・日本城郭史学会委員)

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