岡口門から入り、北(右側)へ少し進むと、高く整然と積み上げられた「松ノ丸櫓台」に行きあたります。  反り返った美しいラインの櫓台は、5代藩主徳川吉宗の時に改修されたと伝えられる城内では、比較的新しい石積みです。同じような積み方は、三年坂沿いにある不明門跡(現・駐車場)入口の「高櫓台」にも見られます。いずれも積み上げる石に隙間をつくらない「切込接(は)ぎ」という工法ですが、同じ大きさの石を用いて積まれているので「箱積み」と呼んだりします。

 さらに、その石垣には勾配があり、しかも天端部(頂点)に近づくほど垂直に積まれています。この垂直部分を「反り」といいます。この反りある石垣が両櫓台の特徴です。この反りのある石垣を「宮勾配」と言いますが、忍びの者でも登れないので「忍び返し」とも「武者返し」とも言われ、名古屋城や大坂城などで見られますが、中でも築城の名手である加藤清正の築城による熊本城では、特に多く見られるので「清正流」と呼んだりし ています。この工法は、和歌山城内では、松ノ丸櫓台と高櫓台の二カ所以外に見られません。

 これに対して、勾配や反りを持たずに、地上からほぼ垂直に積まれた石垣を「高虎流」と呼んでいます。築城の名手で名高い藤堂高虎が得意とする工法で、和歌山城の大半をしめます。和歌山城の石垣普請に高虎がかかわったためでしょうが、和歌山城において「清正流」「高虎流」の両方の石垣を見ることができるのがいいですね。(水島大二・日本城郭史学会委員)

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