追廻門北方から護国神社南、そして不明門跡まで続く、一際高い石垣は「砂ノ丸高石垣」と呼ばれています。前回紹介した三年坂の高櫓台はこの南端です。砂ノ丸というと、グラウンドの広場部分を思い浮かべるかも知れませんが、護国神社のあたりも砂ノ丸になります。この一帯は、徳川頼宣が拡張したところで、県庁前交差点からみると、非常に迫力のある高い石垣の連なりが分かります。

 この石垣には反りがなく、地上からほぼ垂直に積まれているのが特徴です。これは築城の名手で名高い藤堂高虎による通称「高虎流」と呼ばれる積み方で、連なる石垣は、のこぎりの歯のように、石垣を前方に突き出しながら積まれています。このような構造を「横矢掛け」、あるいは「折れ」といいます。これは鉄壁な守りを想定したもので、石垣をよじ登ろうとする敵兵の横を、突きだした石垣上から矢を掛ける仕組みで、中世・近世の城に多く取り入れられた作りです。

 不明門跡の駐車場から高櫓台に通じる坂道を登り、石垣上を西に歩くとこの折れ構造がよく分かりますが、夏は草が生い茂り、しかも高いので注意が必要です。この一角に前回お伝えしたチギリ彫の石や、「地 表角 八たん」「地 表角 十四たん」など彫られた文字刻印石が置かれています。文字は石を積む場所を指定したものと思われます。その道路側下には「天狗の腰掛け」と言われる伝説の石もあります。

 さらに西に歩くと時代を経た雁木があります。どこかうらぶれた感じのある雁木は、日の光によって絶妙な枯れた風合いを見せてくれます。古城の雰囲気が漂うお薦めポイントです。(水島大二・日本城郭史学会委員)

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