ニュースポーツ Baseball 5 ー 海南市の(株)サンコー 日本代表選手とコラボ

 世界約80カ国でプレーされている「Baseball 5(ベースボールファイブ=B5)」。2026年ユースオリンピック正式種目に承認された新しい競技で、日本代表の六角彩子選手(茨城県)がスポーツ庁のアスリート学校派遣プロジェクトを通じ、国内の普及活動に取り組んでいる。その際に活用しているのが、海南市大野中の生活サポート用品メーカー、株式会社サンコーの「おくだけ吸着マット」だ。

軽くて、はがせる

ベースボールファイブ日本代表の六角彩子選手

 B5は2017年にキューバで誕生したスポーツ。ゴムボール一つあればどこででも楽しめる手軽さや、1試合5イニングのスピーディーな展開が若者に支持されている。チームは男女混合の5人制。バッターが自分でトスしたボールを手で打ち、ベースを走って得点につなげる。ファインプレーにはチームの垣根を超え、互いに拍手を送り合うのも特徴だ。日本は24年10月時点で世界ランキング3位。

 茨城県出身の六角選手は女子野球W杯優勝4回の経歴を持つ。B5と出合ったのは19年。野球にはない魅力に「これだ」と直感し、競技活動を始めた。

 23年からはスポーツ庁の派遣で全国の小中学校を訪問。ところが、問題が浮上した。「野球のベースを使っていたのですが、重くて持ち運びが大変で。また、体育館だと走るとずれて滑り、安全面に問題がありました」。テープで固定したりもしたが、はがす際に床が傷んだり、ゴミが出たり、使い切りで費用がかさむことが悩みの種だった。

緑色のマットが、六角選手がハサミで切って加工したベース

 「軽くて、ずれなくて、繰り返し使えるものはないかな」とネットを検索していたある日、目に留まったのがサンコーの「おくだけ吸着マット」だった。床に敷いてフローリングのキズを防止する商品で、裏面に吸着加工が施されている。すぐに購入し、ハサミでベース形に切り、自身の練習や学校で試してみた。すると、ずれることなく、簡単にはがせ、吸着が弱くなっても汚れを拭けば復活することが分かった。何より軽い。学校関係者から「ほしい」との声が多数寄せられたことから、昨年11月、思い切って同社に「B5のベース作りにご協力いただけませんか」とメールを送った。

 

一緒に商品開発

  角谷太基社長

 一方、連絡を受け取った同社の角谷太基社長。当初、B5のことは知らなかったものの、「六角選手の、この競技を広く普及したいという強い志に感銘を受け、『ぜひ一緒にやりましょう』と即答しました」。以降、同選手と商品開発部門が手を携え、〝理想のベース〟作りに着手。吸着力や色、薄さ、素材など何度も改良を重ね、現在、ほぼ完成までこぎつけた。日本代表選手とのコラボに、社内が活気づいてきたのは思わぬ副産物だ。

 さらに同社は今年5月、同選手が代表を務める茨城県のチーム「5(ファイブ)スターズ」および同選手とスポンサー契約を締結。活動資金の援助や情報発信などをサポートしていく。

 「頑張る人を応援することで、プレーヤーも、社会も、私たちも皆ハッピーになれます」と目を細める角谷社長。六角選手も「日本が強豪国であり続けられるよう、しっかりと普及に取り組んでいきたい」と意欲を示す。同社発のベースを使った競技人口拡大と、世界を舞台にした同選手の活躍に期待が高まる。

(ニュース和歌山/2025年7月26日更新)