ユネスコがデジタル化推奨
6年前にユネスコが発表した磁気テープの「2025年問題」。VHS方式の録画が視聴できなくなる可能性を示したもので、映像のデジタル変換を推奨している。今年に入り専門店には「大切な家族の思い出が見られなくなる前に」と、駆け込みでダビングを依頼する人が急増中。背景を見た。
テレビ番組や家族の日常などを録画したビデオテープと再生用ビデオデッキ。内閣府の消費動向調査「主要耐久消費財の普及率(全世帯)」によると、ビデオデッキは1980年の発売当初は2.4%だったが、ビデオカメラと足並みを揃えるように87年ごろから一気に伸び、2000年ごろには約8割の家庭に普及。子どもの成長やイベントを映像にして残すライフスタイルが定着していった。
しかし、光ディスクにデジタル録画ができるDVDプレイヤーが00年代に入って登場。クリアな映像や音響、扱いやすさが好まれ、ビデオの需要は一気に下降。メーカーの事業撤退が相次ぎ、VHSビデオデッキは16年に生産を終了した。
劣化と修理困難
各種メディアのダビングサービスを手がける和歌山市平井の写真プリント専門店「フォトキューブ」の谷口哲也さんは、国連教育科学文化機関(ユネスコ)が発表した「2025年問題」について、「VHSテープおよび再生デッキの寿命、劣化、修理困難が主な要因」と分析する。
VHSテープの寿命は一般的に約30年といわれ、90年前後に販売されたものは現時点ですでに耐用年数を迎えている。カビや日焼けによる物質的劣化、磁気テープの磁力が弱まる時期的劣化、擦り切れや絡まりも深刻なダメージだ。
再生用ビデオデッキも同様で、経年劣化によってテープを読み取る磁気ヘッドが弱くなり、音声や映像の乱れ、変色を引き起こす。さらに、生産終了から8年以上が経過し、部品が手に入りにくくなったことから修理は困難を極めている。
「これらの状況からユネスコは19年に、磁気テープに保存された情報が再生できなくなる危険性を『マグネティック・テープ・アラート』として発表。2025年までに映像をデジタル化するよう警鐘を鳴らしています」(谷口さん)。
依頼5倍に急増
昨年末ごろ、この問題がテレビや新聞で報じられて以降、同店では、デジタルデータへのダビング依頼が以前に比べ約5倍に急増した。通常なら1カ月ほどの納期が、現在は4〜5カ月待ちで、多くは家族旅行や運動会、結婚式などのホームビデオという。
2025年を最後にVHSテープが見られなくなる訳ではないが、放置していると劣化は進み、再生できなくなる日がくるかもしれない。
「ビデオカメラを片手に録画した人は、家族の表情や声、姿をいつまでも残したいと思っていたはず。ここで大切な思い出を失うのはあまりにも惜しい。早めにデジタルに移行し、いつまでも手元に残してもらえれば」と話している。
VHSテープからDVDへのダビング(60分から)2200円〜。メディアの種類や時間により異なる。フォトキューブ(073・451・7588)。㊍休み。
(ニュース和歌山/2025年9月13日更新)


























