直接打撃で競う「第2回国際フルコンタクト空手道選手権大会」が5月31日、6月1日の2日間、東京で開催され、新極真会和歌山支部(黒岡八寿裕支部長)の前田勝汰選手(32)、岡田侑己選手(28)が各出場階級で優勝を果たした。仕事の合間に厳しい練習を課して世界の頂点に立った両選手が、苛烈な闘いを強いられた決勝戦を振り返る。

軽重量級 前田 勝汰さん

先手必勝で前へ

 身長168センチという、空手家としては大柄とはいえない体格。普段は柔和な雰囲気で周囲を和ませる好漢だが、試合が始まれば表情は一変。左右からの突きを積極的に繰り出す真っ向勝負が信条だ。

 今大会は、それまでの主戦場だった中量級から1つ階級を上げた軽重量級(80㎏以上90㎏未満)にエントリー。全日本クラスの実力派が集う激戦を勝ち抜くために、パワー強化のトレーニングを積み重ねて大会に臨んだ。

 「上背のある選手が多く不安もありましたが、日ごろの練習が実を結び、予選を勝ち抜けました」と振り返る。

 決勝戦の相手は、若手のホープと期待されている江口雄智選手(福岡支部)。前蹴りの応酬から幕が開いた一戦は、中盤に不運にも江口選手の顔面に突きが入ってしまい、審判から注意を与えられる。しかしここでひるまずに、突きの連打から攻撃の手を緩めることなくそのまま押し切った。

 「東京まで応援に来てくれた妻や子に優勝した姿を見せることができて、ほっとした気持ちが大きいです」とほほ笑む。

 公務員として勤務する傍ら、家族との時間を削って練習に励む毎日。今年で32歳、試合に出場する選手の中では年長者になる。

 「空手家を引退した兄の分まで第一線で活躍し続けるため、日々の研鑽は欠かせません」

 

重量級 岡田 侑己さん

華麗な技で魅了

 重量級の選手にもかかわらず、軽快なフットワークが持ち味。得意とする足技を軸に、試合の主導権を握る。一撃必殺をねらう回転蹴りはスピード、切れ味とも抜群。対戦相手に大きなプレッシャーを与える。

 昨年7月に獲得した、第1回空手チャンピオンオブチャンピオンズ初代王者として臨んだ負けられない大会。初日の予選4試合でダメージを蓄積せず、翌日の決勝に向けて余力を残せるかがポイントだった。致命傷を受けないよう、軽やかな動きを意識して予選を勝ち上がった。

 決勝戦は工藤昴朗選手(世田谷・杉並支部)との対戦。序盤から動きの冴えを見せ、胴廻し回転蹴りで技ありを奪取。しかし工藤選手も間合いを詰めて圧を強めてくる展開に。攻めあぐねるような状況でも冷静に技を仕掛けるクレバーな試合運びで勝利を手繰り寄せた。

 「国際大会は初優勝だったので純粋にうれしかったです。師範や先輩、道場主、ご父兄、職場の上司、家族の支えで今の自分がある。少しでも恩返しができました」と喜びをかみしめる。

 空手を始めたのは5歳のころ。体質改善を目的に親から薦められたのがきっかけだが、弱い人を助けるための強さを身に付けたいという思いが芽生え、一層練習に励んだ。

 「心技体と共に礼儀、礼節が身に付くスポーツ。子どもたちにも取り組んでほしいです」

(ニュース和歌山/2025年10月18日更新)