和歌山市などエリア別に紹介
細かく書き込まれた史実に加え、近隣のショップ情報を掲載。眺めるだけで街歩きをしているような気分になる歴史マップがある。手がけたのは今春、がんのため62歳で亡くなった谷口勝美さん。2009年の第1作から最後に完成させた「城南・雑賀版」まで全9種類。和歌山市や岩出市をエリア別に詳しく紹介している。
和歌山市本町の裏地工務店に勤め、営業推進員として地権者を訪ねることが多かった谷口さん。信頼関係を築くにはどうすればいいか頭を悩ませていたころ、ある地権者から近くにある祠(ほこら)の由来を聞いた。「地域の歴史を盛り込んだマップを作れば、そこに住む人たちの誇りになるのでは」とひらめき、さっそく行動を開始した。
最初に取りかかったのは、有本・新在家・黒田・太田地区。地元をよく知る人のところへ足を運び、話を聞いて情報を収集。図書館や博物館でさらに調べ上げ、知られざる街の顔を一つひとつ明らかにしていった。写真は徒歩で現地をめぐりながら撮影。編集ソフトを使ってマップに仕上げた。完成まで約半年がかりの労作だが、地権者や地域の人に喜んでもらえることが励みになった。
特徴は、史跡や天然記念物、地名のいわれといった歴史だけでなく、コンビニや飲食店など現在の情報を重ね合わせている点。例えば、中之島・和歌山駅周辺版では和歌山ラーメンの店をいくつも示し、食のニーズにも対応。店舗に閉店などがあれば確認の上修正し、都度更新した。
しかし、24年から始めた城南・雑賀版は、がんの治療を受けながらの制作となった。歩くことがままならなくなると、同僚や後輩が写真撮影を引き受けるなど協力。病を押して在宅ワークで取り組み、今年3月30日の完成を見届けた後、4月10日に息を引き取った。
同社の西田博子さんは、谷口さんの姿勢を「まさに職人の域。学ぶべきことが多かった」と振り返る。同社では従来通り希望者に配布することを決めており、「ぜひたくさんの人に見ていただきたい」と望んでいる。
裏地工務店で全種類取り扱い。無料。同社(073・488・2725)。
(ニュース和歌山/2025年11月1日更新)



























