祖母は現在80歳代で、70歳代後半から現在まで転倒により3カ所ほど骨折しており、数年前に骨粗しょう症の診断を受けています。祖母には元気でいてほしいです。転倒予防などあれば教えてください。


《回答者》
◆リハビリテーション科
今村病院
リハビリテーション部
理学療法士
黒木 健匠先生

 「高齢者は転倒で骨折しやすい」ということはよく知られています。その原因として「筋力低下による転倒」「骨粗しょう症」などがあります。

 高齢者の筋力低下には様々な理由があります。まずは運動不足によるものです。学生時代は運動をする機会があったのに年を重ねるにつれ機会が減った、また運動するのが億劫になったという人が多いと思います。また加齢も起因します。一般的に筋力は20代が特に高く、それ以降の年齢になると筋力、筋肉量が低下しやすいです。これらの原因によって体を支える筋力が低下してふらついたり、つまずきやすくなり転倒する危険性が高まります。

 次に骨粗しょう症についてです。骨粗しょう症とは骨量(骨密度)が低下する病気です。骨量(骨密度)は男女ともに幼少期から増加し、20歳前後に最大になります。20歳ごろ以降の骨量は40歳半ばまではほぼ変化はなく、50歳近くから減少します。特に女性は男性と比べて骨量が急激に減少します。これは骨量が減少する原因が、閉経と加齢のためであると考えられています。加齢に加え、運動不足になると骨はもろくなり、小さな衝撃や転倒により骨折リスクが高まります。

【転倒予防に効果的な運動】

 筋力低下や骨粗しょう症への予防は、適度な運動と十分な食事です。高齢者の運動量の目安は毎日40分以上の身体活動といわれており、これは1日約6000歩程度に相当します。健康維持のためには週2回以上、1回30分以上の運動習慣が理想といわれます。

 しかし、突然これらを始めると運動を継続することが難しくなります。まずは5分や10分から習慣づけていきましょう。自宅でもできる簡単な運動としてスクワットを紹介します。まず自分が手をつかずに立ち上がれる高さのイスに座り、両手を前方に上げ、足を肩幅程度に開きます(イラスト参照)。その状態から立ち座りを行います。10回を1セットとし、1日3~5セットが目安です。身体に痛みが出る場合は中止してください。慣れたらセット数を増やしたり、イスの高さを低くするといいでしょう。

 最近つまずいたり、転倒することが増えた、いつも通りの動きができなくなった等の心配ごとがあれば、一度医療機関にご相談ください。

(ニュース和歌山/2025年11月30日更新)