コロナ禍での自粛をきっかけに足を踏み入れたパワーリフティングの世界。競技を始めて2年で初出場した大会に優勝し、一躍全国レベルの舞台へ。昨年7月に開催されたアジア大会で頂点に輝き、続く国民スポーツ大会では自己ベストを更新して第1位となった。今、めきめき頭角を現してきた若き実力者の素顔に迫る。
初出場で優勝
250㌔㌘のバーベルを強く握りしめ、何度も息を整える。肩に担ぎ、深くしゃがんだ後、全身の力を爆発させて立ち上がる。パワーリフティングスクワット種目の日本記録保持者は、紅潮させた顔で練習を終えた。
競技を始めたのは大学時代。所属していたバドミントン部が2020年、コロナ禍の影響で活動休止に。何事も成し遂げずに大学生活を終えたくない。そんな思いから始めたのが筋トレだった。
半年間は自宅で練習し、大学再開後は体育会専用ジムでトレーニングを継続。そのころトレーナーからパワーリフティングを勧められた。
競技はスクワットを加えた「ビッグスリー」と呼ばれる3種目で持ち上げた総重量を競う。ベンチプレスは、ベンチ台に寝てバーベルを胸まで下ろしてから押し上げる。デッドリフトは、床に置いたバーベルを直立姿勢まで引き上げる。
全くの未経験だったが、いざ取り組んでみると、高重量のウェイトをどんどん持ち上げられるようになった。努力が記録として明確に現れる競技性にすっかり魅了された。
2022年4月、初めて出場した大阪府パワーリフティング選手権大会ジュニアの部で505㌔㌘を持ち上げ優勝を果たす。競技を始めてわずか2年で全国への扉をこじ開けた。
応援を力に
大学卒業後は、自動車や鉄道車両などに使われるベアリングを製造するNTN株式会社に就職。橋本市にある和歌山製作所に勤務し、競技との両立を続けている。
同社にはパワーリフティング競技部があり、各拠点で活動するメンバーたちとは切磋琢磨する間柄。大会出場時にはサポートしてくれる大切な存在だ。「皆さんの応援が私の力になっています。自分もいつかは仲間や地域の人々に勇気や感動を与えられるような選手になりたいです」
世界の頂点へ
競技を始めて5年、たゆまぬ努力が実を結び始める。昨年7月、姫路市で開催されたアジアン・アフリカン・パシフィック・パワーリフティング&ベンチプレス選手権大会男子66㌔級に出場。国際大会の雰囲気に呑まれて、持ち上げる重量を誤って申請してしまうなど緊張が焦りになった場面もあったが、647・5㌔㌘の記録で優勝を飾った。しかし、試合後「本来ならもっと力が出せたはず」と悔いが残った。
自らへの借りを返す機会はすぐに訪れる。9月に開催された国民スポーツ大会「わたSHIGA輝く国スポ」では、自己ベストの681㌔㌘を達成し優勝。しかもスクワットの日本記録を更新する256㌔㌘のリフトを成功させた。「試合運びのイメージトレーニングを徹底し、コンディションを見直したおかげです。それに大阪から来てくれた家族の応援が心の支えになりました」
目標は世界の頂点。国内1位の座をキープしつつ、ベストレコードをたたき出すための準備に余念がない。「焦らず、丁寧に、日々を積み重ねたい。一番強い男として世界大会で優勝します」
(ニュース和歌山/2026年1月3日更新)




























