村田諒太選手や山中慎介選手など、世界王者を輩出している帝拳ジム(東京)所属、紀の川市出身の村田昴さん(28)。5月に開催されたWBOアジア・パシフィック・スーパーバンタム級で、小國以載選手に勝利しました。デビューから10戦全試合KOと破竹の勢いです。「目指すは和歌山出身男性初の世界王者です」。握りしめる拳に迷いはありません。
全試合KO
──2度目の王座防衛に成功しました。
「今回戦った小國選手は元IBF世界スーパーバンタム級王者。さらに日本人同士の戦いのため、試合前から注目が集まっており、勝ててひと安心しました」
──小國選手の印象は?
「どんな強い選手にも対応できる、オールマイティな〝技術の人〟だと思います。しっかり練習して挑まないと厳しいと思い、全体的なレベルアップを目指しました」
──試合内容で良かった点、改善点は?
「前半は足を使ってとにかく動き、無理に突っ込まず、後半一気に攻撃を仕掛ける自分の戦法がうまくはまりました。ただ試合開始直後、1、2ラウンドは小國選手にペースを奪われました。そういう時でも自分のペースに引き込めるよう、今後は独自のリズムを考えて挑みます」
──試合中は何を考えて戦っていましたか?
「こちらの苦手なところを的確に突いてくるのが小國選手の特徴なので、チャンスを待って一撃入れようと、とにかく目で動きを追いました」
憧れの存在
──ボクシングを始めたきっかけは?
「もともと空手を習っていましたが、小5の時に元プロボクサーで世界3階級王者の長谷川穂積さんの試合を観客席で見て、かっこいいと衝撃を受けました。すぐさま神戸にある、長谷川さんが所属する真正ボクシングジムに通うように。空手は中学卒業まで続けましたが、高校からはボクシング一本に絞りました。月に1、2回神戸に通い、教わったことを平日、父と何度も練習しました」
──長谷川さんのどこに憧れましたか?
「ディフェンス力です。相手の攻撃を華麗にかわし、カウンターをしっかり決めていくところを参考にしています。本人と交流があり、応援していただいています」
──同じ階級に4団体世界統一王者、井上尚弥選手がいます。
「自分にとって雲の上の存在です。ただ同じ階級なのでこれから比較されることが増えると思うと、身が引き締まります」
──和歌山にはよく帰ってきますか?
「試合後、毎回1週間ほど地元でゆっくりします。友人と遊んだり、父が経営しているマッドスピードボクシングジムで体を動かしています。練習生にアドバイスすることもあります」
──将来どんな選手になりたいと?
「小学5年生で長谷川さんに出会った私のように、『あの人みたいになりたい』と、だれかに憧れてもらえるようなボクサーになりたいですね」
──ボクシングの魅力を教えてください。
「日々の練習にかける時間や努力を経てリングに立ち、そこで勝った瞬間にだけ味わえる大きな達成感は何にも替えられません。さらに、いつも応援してくれる周りの人が喜んでくれて、試合後、みんな笑顔で過ごす時間が、私にとって最高のご褒美ですね」
──地元のファンにメッセージを。
「これからもっと上のステージを目指していきます。和歌山はボクシングが強いイメージがない。だからレベルを上げらるれよう、引っ張っていく存在になりたいです。一つひとつの試合と真摯に向き合い、勝ち進む。その先に自ずと世界王者への道があると信じています」
(ニュース和歌山/2025年6月21日更新)