団塊の世代が全て75歳以上となる2025年まであと7年。高齢化の進展を受け、看護職員の需要がますます高まると確実視されている。その確保のため、期待されているのが、免許を持ちながら今は現場を離れている潜在看護師たちだ。〝2025年問題〟と呼ばれる社会的課題に備え、復職を目指す人をサポートする取り組みを見た。

潜在看護職員研修で不安解消 採血に特化した講習会も

 「採血はベルトを巻いてから1分以内に」「針を刺す角度に注意して」──。11月6日、和歌山県立医科大学看護キャリア開発センターが開いた「働いていない看護師さんの支援プログラム」。30代を中心に27~54歳の18人が講師の説明に耳を傾けた。採血や静脈注射のほか、呼吸音聴取、心電図の取り方も再確認した。

 参加者の一人、36歳女性は「医療の技術や機器が日々進歩し、あせりがふくらむ中、専門職でやっていたころの自分を思い出せました」、38歳女性は「育児に追われるここ最近は母親としての自分でしたが、一人の看護師としての自分を客観的に見られる良い機会となりました」と感想を話す。

 このプログラムは15年にスタート。毎年2回開き、「これまで各回の参加者は片手で足りるくらい。昨年は2回合わせ3人でした」とセンター長で和医大附属病院看護部長を務める角谷知恵美さん。今年はスーパーマーケットにチラシをはり、テレビで広報するなどPRを強化したのに加え、小さい子を持つ人が参加しやすいよう、一時保育を取り入れた。7月の第1回に10人、11月の第2回は18人、計28人と大幅に増えた。

 和歌山県看護協会も10年から、看護師、准看護師、保健師、助産師の看護職資格を持つ人対象に、復職支援研修を実施。現在は、県看護研修センター(海南市南赤坂)での講義に加え、医療機関または訪問看護ステーションでの現場演習を含む6日間の日程で行う。受講者の6割は復職しており、山本喜久子常任理事は「復帰に向け漠然と抱えていた不安が、受講してクリアになったと話す人が多い。復職後、『やっぱり看護の仕事が好きだと分かった』と話してくれる方もいます」と語る。

 この研修とは別に、現場を離れている人たちから不安との声が特に多い採血に特化した演習会を、昨年5月から毎月2回実施している。

 看護職員の復職を進めるため、国は15年にナースセンターへの届出制度を設けた。届けた人には、復職研修や求人情報が提供される。県ナースセンターによると、10月末時点で県内では572人が登録する。

 〝2025年問題〟を抱え、国は高齢になっても住み慣れた地域で暮らせるよう、支援・サービス提供体制(地域包括ケアシステム)の構築を目指す。そんな中、県看護協会の山本常任理事は「訪問看護ステーション、介護老人保健施設などで看護職はますます多く求められる」と見る。和医大の角谷看護部長は「せっかく苦労して取った国家資格。1人でも多くの人が自身のキャリアを考え、自分に合った復帰場所を見つけてくれることを期待します」と願う。

 県看護協会の採血モデル演習は第1、3木曜午前10時、県看護研修センターで実施。無料。希望者は県ナースセンター(073・483・0234)。ナースセンターへの登録制度の問い合わせ番号も同じ。

写真=和医大での潜在看護師向けプログラムで実習に取り組む参加者たち

(ニュース和歌山/2018年11月24日更新)