2015051607nin

 海南市黒江のぬりもの館で月1度、寄席を開くアマチュアグループ「坐・噺(ざ・はなし)の会」。メンバーの天神堂梅紅(てんじんどう・ばいこう)こと助野起実子さん(写真)は、今では珍しくなった「講談」を披露している。講談は落語と違い、軍記、政治、歴史上の偉人のストーリーを読みつつ、解説を交えて聴衆に伝える話芸。「親子の情愛や師弟愛など、忘れてはいけない大切な心がつまっています」と魅力を語る。

 同会は関西大学落語研究会OBの夫、利治さんが2012年に結成し、毎月第4日曜に「ひるさがり亭」を開いている。地域の老人会への訪問寄席も熱心で、昨年は49回実施した。

 鑑賞専門だった起実子さんは当初、寄席の合間に宮澤賢治などの文学作品の読み聞かせをしたが、落語を楽しみにする客の反応はいまいち。そこで自分も芸をしようと決意し、13年11月、大阪・谷町で講談師の旭堂南陵(きょくどう・なんりょう)さんが開く教室の門をたたき、1年間、自宅がある紀美野町から月に1度通った。

 講談は江戸時代から明治にかけて流行した古典芸能。机の上に置いた張扇(はりおうぎ)で、場面が変わる際に勢いよく台を打ちながら、調子をとって暗記した話を読み上げ、説明を交えて進めていく。笑いを誘う落語に対し、道徳的な内容が多いのが特徴だ。

 昨年は教室で出会った関西在住の女性の先輩2人を招き、ぬりもの館で女流講談大会を開始。今年4月26日の第3回では、母と嫁いだ娘の愛を描いた人情話『般若の面』を演じた。表情を豊かに変えながら、約30人を前に、20分間熱演した。

  また、老人会では、古典に留まらず、利治さんが台本を書いたオリジナルの「紀州偉人伝シリーズ」を発表することも。世界初の全身麻酔手術を行った華岡青洲や「稲むらの火」で知られる濱口梧陵、日本人女性初の五輪金メダリスト、前畑秀子ら7作品あり、利治さんは「身近な人物の話の方が、楽しんで聞けると思って書きました。まるで実際に見て来たかのように話をふくらませています」とにっこり。

 起実子さんは「お客さんのささいな反応に緊張したり、止まったりしてしまうこともありますが、若い人にも楽しんでもらえるよう今後も続けたい」と練習に励む。

 次回のひるさがり亭は5月24日(日)午後1時。無料。女流講談大会は秋の予定。なお、同会は訪問先を募集。無料。詳細は助野さん(073・499・0154)。

(ニュース和歌山2015年5月16日号掲載)