映画『ONODA』主演 遠藤雄弥さん、津田寛治さんに聞く

 第二次世界大戦の終わりを知らされないまま、フィリピンのルバング島で30年近く過ごした海南市出身の小野田寛郎さん。彼の壮絶な生き方をフランス人監督が描いた長編映画『ONODA』が10月8日㊎、全国公開される。ダブル主演で小野田さんを演じた俳優の遠藤雄弥さん(34)と津田寛治さん(56)に話を聞いた。(文中敬称略)

大和魂伝える

ジャングルで一人になった小野田さんを演じる津田さん ©bathysphere – To Be Continued – Ascent film – Chipangu – Frakas Productions – Pandora Film Produktion – Arte France Cinéma

 

──終戦を知らず30年近くジャングルで過ごした小野田さんの印象は?

 遠藤「オーディション用のシナリオで初めて、こんな壮絶な人が実在したんだと知りました。小野田さんが暮らしていた海南市には非常に興味があります」

 津田「僕は実際に帰還された時にテレビで拝見し、驚いた記憶があります。小学生くらいだったかな。日本人が大事にしている大和魂を、高度成長期の日本に持ち帰った人ですよね」

──遠藤さんは、終戦直前に派遣されたルバング島で、玉砕を許されず、仲間と生き延びようとする若い小野田さんを演じました。

青年期の小野田さんを演じる遠藤さん
©bathysphere – To Be Continued – Ascent film – Chipangu – Frakas Productions – Pandora Film Produktion – Arte France Cinéma

 遠藤「僕のパートは、人としてのあり方を問われていると感じました。戦後もあの島へとどまるに至った様々な感情というのでしょうか。人を信じるか信じないか、喜怒哀楽、仲間との魂のやりとり…。その中で周りの人や己と向き合う姿が、散りばめられています」

 津田「仲間内でなぐり合いが始まったらとことん最後までなぐり合う中で信頼が生まれるような、仲間との絆がすごく大事ですよね」

 

孤独なジャングル

──一転、津田さんは帰還前の小野田さんです。最後まで共に過ごした小塚金七さんが亡くなり、ジャングルでの孤独な姿が印象的です。

 津田「場所そのものの力が大きかったですね。ジャングルの中で一人になると、自分を保つのがものすごく大変です。自分と向き合い、自分がどういう人間か『忘れない』こと。意識して覚えておかないと、時が経つにつれ体や精神が朽ち、そのまま土になって木になってしまう恐怖というんでしょうか」

 遠藤「津田さんのパートは、小野田さん自身や、それまで島で触れ合ってきた人たちとの絆を自問自答するわけで、若い小野田とは向き合い方が違いますよね。ある種、心が裸になった状態とはこういうものだというのが描かれていました」

 津田「仲間がいたからこそやってこれたんですよね。実際の小野田さんも、最後まで共に過ごした小塚さんが亡くなった後はあっという間に日本へ帰って来られました」

 

カンヌで称賛

──最後に、和歌山の皆さんへメッセージを。

 遠藤「カンヌ国際映画祭『ある視点』部門オープニングで上映され、15分のスタンディングオベーションを受け感動しました。小野田さんの地元である和歌山の皆さんにも縁のある作品です。こういう人がいたと再認識してもらえれば。技術が進化した豊かな今と違い、何もない環境で周りの人や己と向き合う時間の大切さをぜひ思い出し、感じてください」

 津田「フランスの気鋭、アルチュール・アラリ監督がめちゃくちゃ小野田さんをリスペクトして、監督の視点で小野田さんの人生を読み解いて作りました。若手俳優の姿も必見です。この映画を和歌山の誇りと思っていただけたらうれしいです」

(ニュース和歌山/2021年9月25日更新)