「状況変わるきっかけに」

 家事や家族の世話を日常的に担う子ども〝ヤングケアラー〟を題材にした映画『助けてなんて言えないよ(仮)』の撮影が8月から、海南市で行われることが決定。7月1日、同市内で制作発表が行われた。

 メガホンを取るのは、三池崇史、堤幸彦ら有名映画監督の監督補や助監督を務めた高明(こうめい)さん。「社会的な問題を正面から捉えた作品です。全国のいろんな場所で上映して、ヤングケアラーとして苦しんでいる子どもたちの状況が変わるきっかけにしたい」と意気込んでいる。

高明監督(左端)とキャスト。和歌山市出身のゆかわたかしさん(右端)も出演。

 主人公は、大阪から和歌山へ引っ越してきた小学4年生の伸一。精神疾患を抱える母親とうつ病の父に代わり、炊事や家事、弟の世話に追われている。「大丈夫」と笑い、「助けて」と言えない彼の葛藤と希望をリアルに描く。

 同監督が11年前、映画制作の応援として同市を訪れて以来、市民と交流が続き、今回のロケが実現した。撮影は日方小学校や南野上小学校、市営住宅などで行われる。

 自身がヤングケアラーだった同監督は、当時感じていた孤独やつらさを脚本に重ねたという。タイトルのように「助けて」と周囲に言えなかったのは、「ほかの人に話すことで、大切な家族を否定することになるんじゃないかと思っていた」と振り返った。さらに、「『助ける』とは愛すること。血のつながりがあろうがなかろうが、誰かが『あなたのことを愛している』と伝えてあげられれば」と語った。

 こども家庭庁後援。来年のきみの海南映画祭で完成披露試写会を予定。劇場公開は2027年1月から。撮影や上映活動費などをクラウドファンディングサイト「キャンプファイヤー」で募っている。

(ニュース和歌山/2025年7月19日更新)