和歌山市小倉エリアの住宅地に建つ県立和歌山高校。同校の生徒でつくる「小倉地区活性化委員会」のボランティア活動が、高齢化が進む地区住民に喜ばれている。ゴミ拾いイベントをきっかけに資源ゴミの集団回収を始め、地域の文化祭や交流会に参加するまでに発展。祖父母世代の人から届く感謝の声を励みに、生徒たちは「若い自分たちがここを盛り上げよう」と意欲的に取り組んでいる。

感謝の声に喜び

資源ゴミを回収する生徒たち。地域の人(左から2人目)も見守る

 小倉地区活性化委員会は、昨年4月に実施した2年生の学年レクリエーション「ゴミ拾い王決定戦」がきっかけで誕生した。同学年はコロナ禍で中学校の諸行事が制限された世代。教諭の久保篤史さん(50)は「中学時代の思い出が無い、真っ白な状態。社会との関わりを経験し、中学3年間を取り戻してもらいたいと発案したのが地区のゴミ拾いでした」。実はこのイベント、ねらいがもう一つあった。久保さんは日ごろから「近隣の人に学校を認めてもらうにはどうすればいいか」と思いを巡らせており、ゴミ拾いという形で地元に飛び込めば理解が深まるかも知れないと考えた。

 迎えたイベント当日、ゴミを集める生徒たちにうれしい出来事があった。多くの住民が「頑張ってるな」「ありがとう」と声をかけてくれたのだ。祖父母世代からの思わぬ励ましに驚きつつも「地区の人に喜んでもらえた」「自分も役に立っている」と気づいた生徒たち。近隣との交流が生まれた瞬間だった。

 その感動を地域貢献に活かそうと、直後に同会を発足。高齢化が進む小倉地区を若い力で盛り上げたいと、自主的に活動に取り組んでいる。メンバーは固定せず、都合のつく人が参加するスタイル。無理せず気負わないことが継続の秘訣と心得ている。

相互信頼築く

 同会の柱は資源ゴミの集団回収だ。取材した10月3日㊎は6回目で、19人が集まった。徒歩で各家庭へ出向き、玄関で挨拶。古新聞や段ボールなどの資源ゴミを受け取り、学校まで運んだ。事前に回覧板で実施日を知らせているため、どの家も持ち出しやすくまとめてくれている。中には、通りに出て手招きする人もおり「待ってたんやで、こっちこっち」「はい、いま行きます!」、「ここにもあるんよ。重いで、持てる?」「大丈夫です!」と明るい会話が交わされる。頼もしそうに生徒を見つめていた玉置一嘉さん(84)は「この地区は高齢者が多いので若い人の活動がとてもうれしい。助かっています」。前田千晶さん(75)は「生徒さんは皆、礼儀正しくて丁寧。回収日は話ができる機会なので楽しみにしています」と目を細めていた。集めた資源ゴミは久保さんがリサイクル業者に引き渡した。

 同会委員長で3年の稲田恋さん(18)は「活動を通じ、地域と学校が互いに信頼しあえる関係が作り上げられたと実感しています。『ありがとう』と言ってもらえた時はやっていてよかったとやりがいを感じますし、『もっと期待に応えられるよう頑張ろう』と意欲が湧きます」と手応えを感じている。生徒たちの熱心さが伝わり、地域の文化祭や交流会への参加依頼が届くまでに発展した。久保さんは「近隣の方から温かい言葉をかけてもらうことが、生徒たちにとって『心の栄養』になっているようです。今後も地区の活性化を目指し、息の長い活動を続けたい」と話している。

(ニュース和歌山/2025年11月15日更新)