和歌山県教育委員会は、一人ひとりの人格や個性を大切にする教育をベースに、様々な教育活動に取り組んでいます。2025年4月、和歌山県の教育行政の舵取り役に就任した今西宏行教育長に、教育に対する思いや今後の取り組みなどについて、榎本ゆかりニュース和歌山編集長が聞きました。
教育と福祉の連携強化 学校通じ支援につなげる
榎本編集長(以下、榎本) 今西教育長は、今年3月まで県庁の福祉保健部長をお務めでしたね。
今西教育長(以下、今西) 日本は他の国と比べても医療・介護・福祉・保育などの社会保障制度が充実していますが、中には、社会から孤立していて、支援にアクセスできていない人もたくさんいます。福祉の支援は、それを必要とする人が社会のどこかでつながっていてくれれば届けることができますので、児童生徒や保護者を通じて多くの県民の皆さんとつながっている学校は、非常に重要な役割を担っていると言えます。
また、教育の面から見ると、生活習慣・学習習慣が身に付いていないとか、不登校やヤングケアラーのような様々な課題もあります。その解決のためには、こどもたちだけでなく、その家庭を、医療や福祉を活用しながらサポートしていく必要があります。
榎本 県教育委員会の広報紙で、教育と福祉の職員が集まって語り合う場をもっていると読んだことがあります。
今西 そうです。3年前、当時の教育長であった宮﨑泉知事の指示で、教育と福祉の両面から家庭を一体的に支援するための研究チームを立ち上げました。私も、福祉保健部長として当初から参加しています。教育委員会、県庁の福祉保健部、共生社会推進部から自主的に集まった若手・中堅職員が、それぞれの所管や立場を越えて時間をかけて本音で語り合い、施策につなげてきました。
これが実を結び、昨年は2つの市町で「家庭丸ごとサポートチーム」の動きが生まれました。この活動が広がることで、サポートを必要とする人が、学校を通して医療や福祉、介護の支援につながっていけると思います。
質の高い学びで地域の人材育成
榎本 国では高校授業料無償化が議論されており、授業料を気にせず行きたい学校に進学できるので中学生や保護者には歓迎の声がありますが、公立高校から私立高校への流れが増えるのではとの報道もあります。
今西 全国的に公立高校離れが心配されていて、和歌山も例外ではないと思っています。とはいえ、公立高校としては県内の全てのこどもたちを受け入れる体制を整えておかなければいけませんし、県内どこの地域に住んでいても、通えるところに高校をきっちり残しておく必要もあります。また、県内で必要とされている人材を、しっかり育成していく使命もあります。
榎本 では、今後の県立高校の在り方をどのようにお考えでしょうか?
今西 今回の高校授業料無償化を契機に、全国で公立高校の魅力化・特色化の検討が活発になっていますが、和歌山県では無償化の議論が始まる前から、通学圏内に多様で質の高い教育が受けられる学校を整備することや、必要な人材の育成、普通科の生徒も含め、主体的・探究的に学ぶ仕組みづくりに取り組んでいます。
職業学科備えた高等支援学校を検討
社会での活躍 後押し
榎本 全ての人が活躍できる社会にするため、教育としてどのようなことに取り組んでいきたいですか?
今西 宮﨑前教育長の時から教育委員会として考えているのは、障害の有無にかかわらず、こどもたちが可能な限り共に学ぶ環境をどのように作っていくかということです。これまでも特別支援学校に通うこどもたちと小中学校に通うこどもたちが地域や学校間で交流したり、学習したりする取り組みや、高校と特別支援学校が部活動であったり、例えば校内カフェの運営で協力することなど、進めてきました。
ただ、高校段階に限って言うと、現在、盲学校、ろう学校以外の特別支援学校には職業学科はありません。今後、一人ひとりが自信をもって社会へ出ていけるように、職業学科を備えた高等部だけの支援学校(高等支援学校)を整備したいと思っています。
榎本 その高等支援学校をどんな学校にしていきたいですか?
今西 地方では、人口減少に伴って、働き手となる若い人たちの減少も進んでいます。和歌山の高校生には、「あなた方は地域で必要とされている人材なんだ」ということをしっかりと伝えていきたいと思います。障害があってもなくても、一人ひとりが和歌山県にとってかけがえのない存在です。それぞれが持つ、地域を支える力に自信を持ってほしいと思います。
先日、北海道の先進的な高等支援学校を見てきました。その学校では、教員たちが多い時には月100社以上の企業を訪問し、協力してくれる企業を開拓しています。そして、ホテルやベーカリーなどで働く第一線の方々が学校へ来て、生徒たちに直接「プロの技」を教えています。和歌山県でも、こどもたちが自分の可能性を信じ、社会の一員として活躍することを後押しできる学校にしたいと思っています。
榎本 最後に、教育やこどもたちに対して、思いやお考えを自由にお聞かせください。
今西 勉強でもスポーツでも文化芸術活動でも、こどもたち自身が心の底から「楽しい」と思えることが大事だと思います。楽しんでやるからこそ、やる気も出るし、才能や技術も伸びていくんだと思います。皆さんと力を合わせて、そういう環境を作っていきたいですね。
(ニュース和歌山/2025年12月20日更新)































