エリザベス女王が総裁を務める英国王立園芸協会主催の「チェルシーフラワーショー」。世界最高峰と言われるこの園芸コンテストの出展権をかけ、今年は全世界2000社以上が応募しました。選ばれたのは18社。その1つが「生命の輪」と題した作品を出展した、世界では無名のヒロガーデニング(紀の川市)です。代表の田邑嘉浩さん(41)に思いを聞きました。

 

天然素材で勝負

──チェルシーフラワーショーとは?

 「ガーデニングの本場、英国で最も権威のあるフラワーショーで、園芸のオリンピックと言われるコンテストです。毎年5月に5日間開催され、エリザベス女王や、世界の園芸関係者など16万人が来場します」

──なぜ出展しようと?

 「仕事では施工主さんの注文を受けて庭を設計しますが、費用などの制約のない中で理想の庭を造りたいとの気持ちがありました。2012年に初めてショーを見に行ったとき、庭の水の使い方、石の組み方など刺激を受け、同じ舞台に立ちたいと思いました」

──肩書きであるガーデン〝アーティスト〟に込める思いは?

 「メーカーが作る既製品を組み合わせて庭を設計するのがガーデンデザイナーの仕事だとすれば、私の場合、だれも見たことのないデザインを実現するために、素材から自分で創造するので、〝アーティスト〟という言葉を使っています」

──今回、世界に挑む作品(絵図)のテーマは?

 「『生命の輪』です。環境に配慮し、麻コンクリートや天然素材のゴムといった、全て土にかえる材料を使用しています。また、障害の有無にかかわらず、全ての人が自然を感じられるよう植栽を配置し、ユニバーサルデザインを心がけました」

 

〝命の循環〟表現

──ご出身は?

 「岩出市です。大学卒業後、しばらくは会社員をしていました。ただ昔から仏閣にある木や石を見て歩くのが好きだったり、園芸好きの父の影響で、小さいころから植物の名前に詳しかったりと、木や庭が身近にありました。手に職を持ちたいと思い、30歳で庭師へ転身しました」

──心ひかれるものは?

 「昔から、経年変化していく革や、角が丸まった石、時間の流れが表れたものが好きでした。それを表現したのが、独自開発したHIROモザイクという、角を削り、丸みを帯びた木のタイルです。作品内でも使用し、命の循環を表しました」

──世界で競う上での強みは?

 「庭師や外構施工を経験しているので、自分が思い描いたデザインを自分自身で実現できるという点です。目指すはもちろん世界一です」

──これからは?

 「今回、英国には持ち込めませんが、備長炭、高野槙、紀州青石など和歌山の素材には素晴らしいものがたくさんあります。これらを使った庭を世界に発信する存在になりたいですね」

(ニュース和歌山/2020年3月21日更新)