2015082601yamada

 山盛りのガーリックスライスに濃厚ソースをからめたトンテキ。一目で誰もがそのインパクトに圧倒される料理を提供するのは岩出市溝川の「山田ヒロキチ商店」だ。店主の山田洋充さん(40)は和歌山市の老舗洋食店「グリルエイト」で修業を積んだ。どこか懐かしさを覚えるその味は世代を超えて人気を集める。県外の客も引きつけるトンテキの誕生秘話と、洋食に注ぐ愛情を尋ねた。(文中敬称略)

抜群の〝破壊力〟

——看板メニューの「特製たっぷりキャベツとガーリックの濃厚トンテキ」が人気だそうですね。

山田 2012年5月の開店当初は、ニンニクやキャベツのボリュームが今ほど多くなく、いわゆる普通のトンテキでした。ランチタイムのみのメニューでしたが、まかないで食べたスタッフが絶賛し、レギュラーメニューに。その際、見た目にインパクトを持たせて、お客さんに店の味を覚えてもらおうと、ガーリックスライスとキャベツの千切りを今のような山盛りにしました。

——そのボリュームに圧倒されます。

山田 テーブルに料理を届けると、お客さんは「肉がニンニクで隠れて見えへん」と爆笑したり、スマートフォンで撮影したり。見た目と味の〝破壊力〟は抜群ですが、食べると、意外と脂っこくない。味は濃厚で、ニンニクの香りとシャキシャキした歯ごたえ、柔らかく肉厚な豚肉の食感がクセになります。ご飯が進み、キャベツとソースの相性も抜群です。「ニンニクが切れた」と定期的に来てくれるお客さんもいます。夏はスタミナをつけるため、よく注文してくれます。

元は歯科技工士

——料理人の道を選んだのは。

山田 この仕事をする前は、歯科技工士でした。仕事の難しさや大変さを感じる中で、このまま一生この仕事を続けていくのかと悩み、自分の人生を生きたいように生きようと決めたんです。20代後半で何をしようか迷いました。父子家庭で育ったため、小さいころからハンバーグやカレーライスをよく作っていたのを思い出し、料理が好きなんだと気付きました。

——全くの素人からのスタートだったんですね。

山田 そうです。まずは数軒の居酒屋で働きました。和食、中華、洋食など様々な料理を教わり、厨房に立ちました。そのうち、何か1つのジャンルを極めたいと思い、大好きでどの世代にも愛される洋食を志しました。知人の紹介でグリルエイトで修業させてもらえるようお願いしたんです。

——老舗の人気店でどんなことを学びましたか。

山田 親方から、洋食の味の命とも言えるドビソース(デミグラスソース)の作り方や店の回し方を教わりました。レシピでなく舌と感覚で学んだ調理法は、決まった分量と手順で料理を作るのに慣れていた自分には新鮮でした。接客の楽しさも学びました。居酒屋では厨房が客席と仕切られている店が多かったのですが、グリルエイトは、カウンター越しに厨房と客席がつながっていて、お客さんとふれあえます。自分の店もカウンターを設け、味の感想を聞き、言葉のキャッチボールを楽しんでいます。

団らんの場に

——和歌山県外ナンバーの車も多いですね。

山田 テレビや雑誌でトンテキが紹介されるようになってから、愛知や沖縄など遠くから食べに来てくれる人が増えました。また、お客さんが撮影した料理の写真がインターネット上で広がり、口コミで知られるようになってきました。

——店の将来像を。

山田 親子や祖父母と孫といった3世代で食べに来てもらえる店。定番の味としてグリルエイトで学んだソースを継承しつつ、その味を磨いていきたい。居酒屋での経験を生かし、タルタルソースや赤ワインソースなど8種類のソースを選べるようにしています。また、ドビソースを使ったビーフシチューやハンバーグもあります。どの世代にも喜んでもらえる料理でお客さんを迎え、自宅以外で団らんの時が過ごせる、居心地の良い店にしたいですね。

【山田ヒロキチ商店】

岩出市溝川278-1、月曜定休
11:00〜14:00、18:00〜22:00 
ラストオーダーは各30分前 
☎0736・63・1805

【読者プレゼント】「特製たっぷりキャベツとガーリックの濃厚トンテキとごはん(中)セット」の食事券を抽選で10人にプレゼント。応募方法はニュース和歌山本紙8月26日号3面をご確認下さい。

(ニュース和歌山2015年8月26日号掲載)