中華料理の大手チェーン店勤務のころ、まかない用に作る天津飯が大好きだった。「良い卵を使い、多くの人に味わってほしい」と12年前に開店したのが、和歌山市有本の天津プラス。大阪出身で店長の原田真吾さん(40)が、天津飯への思いと、和歌山に移住した理由を語ります。

夕焼け色の卵

──なぜ天津飯をメーンにしたのですか?

 「高一から中華料理のチェーン店でアルバイトを始め、専門学校卒業後に就職。28歳まで働きました。その時に作っていた天津飯が自信作で、29歳で店を構える際、コンセプトを『良い卵で作る天津飯』に決めました」

──良い卵とは?

 「大分県産のオレンジ卵です。取引業者さんに推薦してもらったものや市販のものなど、いろいろ試した中で、名前の通りオレンジ色の卵黄に特徴があり、濃厚な味にひかれました。半熟にするため安全面を考慮し、無農薬のエサで育てた鶏の卵を選んでます」

──天津飯だけで11種類もあります。

 「実は、いくら自信があっても、何度も食べるうちに飽きてきたんです。そこで、他の味を楽しもうと色々工夫し、鷹の爪と紅ショウガが入ったピリ辛とんこつ、もやしやニラ、白菜がたっぷりの野菜あんなどは、そのまま定番メニューにしました。これらを含め、開店当初は6種類でしたが、少しずつ増え、気付けば11種類。さらに思いつき新メニューとして、天津カツカレーや味噌野菜あんもあります」

──看板メニューは?

 「夕焼け天津飯です。卵のオレンジ色が夕陽のように見えることで名付けました。あんはしょう油白湯。コクがありますがしつこくなく、パクパク食べられます。自慢の品であり、一番人気です」

音楽が紡いだ縁

──出身は?

 「大阪の高槻市です。前職で大阪、兵庫と何度か店長を任された後、新店出店のため26歳で単身、和歌山市にやって来ました」

──なぜ独立しようと?

 「忙しさに追われていた時、汐見町のライブハウス、ホーボーズバーに行きました。趣味でギターを弾くのですが、そこで出会った音楽仲間と過ごす時間が何より楽しかった。そんな中、石川への転勤を言い渡されたんです。『せっかくできた仲間と離れ、別の土地で一から人間関係を作るのか。ここを離れるのはイヤだ』と、思い切って踏み切りました」

──出会いで人生が変わったんですね。

 「それまで和歌山とはほとんど縁がありませんでしたが、音楽を介した知人が店に食べに来てくれたり、一緒にライブに出たり。公私ともに今ではかけがえのない場所になりました」

──今後の目標は?

 「〝地域の食堂として生き続けていくこと〟です。10年以上営業していると、かつて店に来てくれたカップルが、次は結婚していて、その次には子どもを連れてきてくれたことがありました。その幸せな風景が忘れられないんです。これからも、お客さんの人生の移り変わりを一緒に感じさせてもらえるような、アットホームで、ふらっと足を運びたくなる、地元に密着した店であり続けたいですね」

【天津プラス】
和歌山市有本685-C
営業時間 11:00〜23:30      
㊐㊗のみ11:00〜21:30
定休日 月曜
電話 073・422・2919

(ニュース和歌山/2025年1月25日更新)