25年前に旅したイギリスで出会ったパブ文化。「オーセンティックなバーほど敷居の高さを感じず、気軽にお酒とお喋りが楽しめる」そんな場所を目指して今夏、築地浜通りにオープンした「BEARS’LOCK」。オーナーの山路拓也さん(55)を中心に、コの字のカウンターでは毎夜会話に花が咲いています。
「やりたい」を形に
──開業のいきさつを教えてください
「大学卒業後、10年間大手通信会社で会社員をしていました。その後、帰郷して自営で商業デザインや映像、イベント関連の仕事を請け負ってきましたが、自分の中の『死ぬまでにやってみたいこと』に飲食業があったんです。仕事で飲食店の開業のお手伝いをする中で思いが膨らみ、2017年にアロチの路地裏で大衆居酒屋『山久』を始めました。コロナを潜り抜けて落ち着いた頃、知人の縁で1年間インドの日本食の店を手伝うことになり、店を人に任せて渡印。しかし、味覚や文化のすれ違いで解雇され、かつ帰国するや店は建物の解体による立ち退きを強いられ、一時は無職になりました。そこから農作業やコンビニ店員をしながら市堀川で屋台営業を始め、この夏に、実店舗をオープンしたところです」
──店のコンセプトは?
「ドラマに出てくるような小ぢんまりとした酒場。本格的なパブよりもコンパクトな『インスタントパブ』を自称しています。なぜ居酒屋・屋台からパブかというと、全部やりたかったから。前の店を求める声も多かったんですが、人生の尺は少ないからこそやりたいことを順番にやっていこうと、思い切って業態を変えました」
心の距離を縮めたい
──こだわりは何ですか?
「イギリスのパブで出会ったスコッチウイスキー『WHYTE&MACKAY』。凍える寒さの中で飲んだこのホットウイスキーに安堵した鮮明な記憶があり、ぜひ飲んでもらいたい。もちろん他の銘柄も揃っていますし、ビールは鮮度にこだわっています。フードはまだ試行錯誤中で、オープンからの人気は釜焼きのピッツァ。これからの季節はホットワインやホットウイスキー、山久時代から人気のおでんもたまに出していきます」
――波瀾万丈ともいえる、多彩な異業種の経験は役に立っていますか?
「飲食業は予想通り楽しい。知り合いの増え方も変わるし、お酒を介するので距離も縮まる。今は人の繋がりで生きていると感謝しています。デザインをやっていた経験は看板や広報物作りにも生かされていますし、何1つ無駄にならず今につながっている。だから人生はおもしろいなと感じています」
――今後の目標は?
「静かに飲むというより、ワイワイガヤガヤした交流の場になってほしい。お酒の魅力は性別も年齢も問わず心の距離が近づくところ。まだまだ手さぐりですが、普段家でビールを楽しまれている方も、たまに酒場の空気感を味わいにきてもらえたら嬉しいですね」
【BEARS’LOCK】
和歌山市雑賀町62
◇電話 090-2001-1240
◇営業時間 15:00〜24:00
◇定休日 火曜、水曜
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ピッツァ 1,000円〜、
ビール 700円〜(写真はメガ 2,000円)
(ニュース和歌山/2025年12月6日更新)




























