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 10年以上のひきこもり生活を経験した和歌山市の殿垣内能範(よしのり)さんが描くキャラクター「との猫さん」が、東日本大震災の被災地、福島の障害者支援に一役買っている。現地の共同作業所が生産する缶バッジのデザインに2年連続で採用され、売り上げに貢献。殿垣内さんは「被災地でボランティア活動する行動力も精神力もない自分でも、バッジのデザインで力になることができうれしい」と喜んでいる。

 大学受験に失敗し、ひきこもりになった殿垣内さん。支援施設で絵を描く中、縁側でくつろいだり、ケーキを食べたりする「との猫さん」を生み出した。優しいタッチで描いた作品は「ほのぼのする」「癒やされる」と評判になり、2012年にポストカード化。これまで約50種類作成し、約5000枚売り上げた。
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 缶バッジは、被災地の共同作業所を支援する「南相馬ファクトリー」が震災で被害を受けた障害者の仕事につなげるために作成。昨年と今年、デザインを全国公募し、約500点から選ばれる100点のうち、殿垣内さんの作品は2年連続で2点入選した。

 丸い缶バッジに丸い顔でめいっぱい主張するとの猫さんは、昨年は周囲に花を散らしたものと、両手を大きく広げたデザイン。今年は「和歌山らしさ」と「つながり」を意識し、みかんをおいしそうに食べる様子と、女の子と仲良く顔をくっつける絵を考えた。

 南相馬ファクトリーは「との猫さんに癒やされている被災者は少なくない。人気者です」。殿垣内さんは「被災した人も苦労があるけれど、絵でほっこりしてほしい。時間の経過で支援できる機会が少なくなっている。意識を向けるきっかけになれば」と願っている。

 バッジは大300円、小200円。みその商店街のアートサポートセンターRAKUで販売。RAKU(073・427・3313)。

写真=ほのぼのしたキャラクターと、それを描く殿垣内さん
(ニュース和歌山2015年10月24日号掲載)