岩出市の草下敦司ん ヒトヂカラ図書館〝開館〟

 トランクケースに児童書をぎっしり詰めて出張する「ヒトヂカラ図書館」を、岩出市の草下敦司さん(38)が立ち上げた。「本を手に取り物語にふれれば、モヤモヤしたものが晴れたり、想像力が豊かになったり。気付きや勇気を与えられることもあります」と瞳を輝かせる。

 本好きで、自分でも短編作品を書く草下さん。「滑空舎」と屋号を付け、お気に入りの古書を売る「一箱古本市」や、自作品が集まる「文学フリマ」に出店している。今回は、普段本を読まない人が物語にふれる時間をつくろうと思い、出張図書館を企画した。

 中学時代から長年経験したひきこもり生活で、心の支えになったのは本を読むこと。国内外のミステリーやホラー作品を読みこんだ。「そんな生活を脱したのは、自分の作品を医師が読んでくれたことが救いになったのもありますね」とにっこり。現在は文庫室を併設した古民家カフェで働いている。

 愛読書100冊を詰めこんだ図書館は、ベストセラー『エルマーのぼうけん』をはじめ、幻想的な作風のいしいしんじ作品、作家とデザイナーのユニット「クラフト・エヴィング商會(しょうかい)」による、架空の商品説明が続く『ないもの、あります』など、児童文学に留まらず、ユニークな作品をそろえた。

 今後は喫茶店や施設に出張する期間限定のブックカフェや、ワークショップ、朗読会を計画中。「児童書はまったくのファンタジーというより、内面を見つめる部分に魅力を感じる。救いのある、現実でも心が癒やされるような作品にふれてほしい」。楽しく豊かないくつもの物語たちを詰めこみ、子どもも大人も現実から離れた世界へと連れて行く。

 紀北地方で出張先を募集している。詳細は「滑空舎」HP。草下さん(nyarusame@gmail.com)。

(ニュース和歌山/2017年5月27日更新)