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 建築士らが市民団体「みんなでつくろう未来の図書館」を発足させ、2月に「準備室」と名付けたワークショップを始めた。南海和歌山市駅ビルの建て替えに伴い、2019年度に駅ビルへ移転開館する和歌山市民図書館を応援する取り組みで、市民同士のアイデア交換や学習の場を設ける。また、子育て世代の母親が集うNPO法人ホッピングは母親たちの生の声を集め、市に要望書を出した。より市民に近い図書館を求める機運が高まっている。

 現在の図書館は1981年、和歌山市湊本町に開館。82年度に本を借りたのは年間33万5555人だったが、人口減少やコミュニティセンターの図書室の開館で徐々に減少し、2014年度は15万3027人に留まっている。

 市は2015年5月に発表した「南海和歌山市駅活性化構想」に、市民図書館の移転を盛り込んだ。交流スペースと子ども主体のゾーンを新設するほか、観光案内所などの機能を持たせる計画で、4階建て、延べ床面積は6000平方㍍。2016年度に設計を進め、17年度から工事に入る。また、17年度には同市土入のテニスコート跡に建設する西保健センターに図書館分館を併設する。

 「みんなでつくろう未来の図書館」は「『静かにしなくてはいけない』『飲食してはいけない』といった従来の図書館のイメージにとらわれず、もっと国内外の事例を学んで新しい図書館づくりを応援しよう」と、建築士の岩西智宏さん、関西でアートイベントを手がける小川貴央さんらが発足させた。

 2月にワークショップを始め、初回の6日は20人が参加し、「図書館とカフェ」をテーマに話し合った。TSUTAYAを展開する会社が運営し話題となった佐賀県の武雄市図書館や神奈川県の海老名市立図書館のほか、生涯学習や市民活動支援の機能を合わせた東京都の武蔵野プレイスなどの事例を紹介した。

 後半は参加者が、どんなカフェが図書館にあれば利用したくなるかを班に分かれて話し合い、発表した。しらすやショウガなど特産品を生かした和歌山らしい商品や、カフェメニューに関連した蔵書の展示、また郷土作家の有吉佐和子や市民図書館に作品が展示されている画家、ヘンリー杉本らをモチーフにした店づくりなどが挙がった。

 オープンテラスがあり、館内で自由に飲食できるアイデアを提案した和歌山大学観光学部4年の野尻野翼さんは「街の図書館は本の貸し出しだけでなく、地域とのつながりが持てる場だと感じた。駅にできたらどうなるのか楽しみ」。今後、図書館でのイベントや交通、サービスなどをテーマに開き、アイデアをまとめて市に提出する。

 一方、子育て支援拠点となる西保健センターに分館が併設されるのを受け、母親たちも新図書館に期待を寄せる。母親の社会参画を応援するホッピングは昨年末、会員にアンケートを実施した。

 回答した174人中、現在の市民図書館を「ほとんど利用しない」は44%に上り、新施設への要望として「駐車場が充分にほしい」が28%、「赤ちゃんコーナー設置」が22%、「飲食ができる」が21%と高く、分館へは低年齢対象の絵本の充実や親子向けのイベント開催などが挙がった。

 上田茜理事長は「現在の市民図書館は1時間以上いると駐車場料金がかかるのがネックになっている。活性化構想の中で新図書館には子ども主体のにぎわいゾーンの新設とあり、そこへの期待が高い」と話す。

 公立図書館の改革に取り組み、『図書館を遊ぶ』などの著書がある和大附属図書館の渡部幹雄館長は「現在の問題点を考え再点検し、他府県の事例を学んで市民皆が使いやすい図書館を希求していく。そういった市民運動のすそ野が広がれば、その人たちがそのまま新図書館をひんぱんに使う利用者になる可能性が高い」とみている。

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 第2回みんなでつくろう未来の図書館準備室…2月20日(土)午後6時半。テーマは「こんなんあったらイイねイベント・特設コーナー・スペース」

場所:ジェームステイラーイオンモール和歌山店(和歌山市中字楠谷573 イオンモール和歌山 1F)

詳細はみんなでつくろう未来の図書館準備室

写真=「図書館とカフェ」をテーマに話し合った

(ニュース和歌山2016年2月13日号掲載)