《回答者》
外科
楽クリニック 藤田 定則院長

 肛門にかゆみがあると、清潔にしなければいけないと思い、排便後に温水便座でおしりをしっかりと洗ったり、入浴時にたっぷり石鹸をつけてこすり洗いしたり、また、赤ちゃん用のおしりふきなどで念入りにきれいに拭いたりする方がおられます。実はこれらの行為が、かゆみを引き起こしているのです。

 肛門を過剰にきれいにしすぎてはいけません。本来、肛門の皮膚には、便や細菌から皮膚を守るバリア機能が備わっているのですが、肛門周囲を洗いすぎることで、わざわざその機能を壊してしまっていることになるのです。つまり、洗いすぎると皮膚を保護する脂分(あぶらぶん)がとれてしまい、潤いや皮膚の抵抗力が弱まります。その結果、肛門が傷ついたり、かゆみやヒリヒリとした痛みが生じます。赤ちゃんは新陳代謝がよく、おしりふきで拭いても皮膚が常に修復されているため問題ありませんが、大人になるとそういう訳にはいきません。

 温水便座の普及が進み、排便後の洗浄が習慣化してしまっている方が多くなりました。しかし、水の当てすぎは、肛門を傷める原因になります。くれぐれも、きれいにし過ぎないように気をつけましょう。

(ニュース和歌山/2020年8月22日更新)