「高砂アラレ」のブランド名で知られる岩出市岡田の増田米菓は、創業約100年。ついた餅を乾かし、油で揚げずに焼いて仕上げる昔ながらの製法で伝統の味を守り続けます。元々はアメリカへの輸出だけでしたが、2005年、国内向けへシフトして以来、多彩な商品を生み出しています。3代目、増田充裕代表(57)に思いを聞きました。

米国で愛された TAKASAGO

 会社が産声を上げたのは、1925年の神奈川県横浜市。充裕代表の祖父、恂一さんが「高砂あられ製造本舗」を立ち上げました。終戦の年、故郷の岩出に戻り、その5年後、親戚が移住していたアメリカへの輸出を始めました。サンフランシスコを皮切りに、ロサンゼルス、シアトル、ニューヨークと販路を拡大。「日系人はお米に郷愁がありました。向こうでは〝TAKASAGO=あられ〟との意味で通っていたそうです」

 製造方法は今も昔も変わりません。米をせいろで蒸し、杵でついて餅に。冷蔵庫で2日間寝かせたものを一口サイズに切り分け、この後、油で揚げるのではなく、焼き上げます。「米を粉にして練り、大量に作る会社もありますが、うちは昔ながらの製法を守っています。食感が違いますし、米そのものの味がはっきりしますから」。祖父の味を受け継ぐ充裕代表は胸を張ります。

 

 

 

 

▲売上1位のごぼう味、バレンタインデーの時期によく売れるチョコあられなど、常時、約20種類をそろえます。近年はもち米シリアル(右)も人気です

 

岩出の自慢へ 気〝餅〟込めて

▲岩出の人たちが他府県の人に渡す手土産にと、パッケージには「紀州岩出」の文字を入れています

 元々は商品のほとんどを輸出していましたが、国内向けに力を入れ始めたのが2005年です。地元・岩出の商工会や若手経営者らの集まりに顔を出す中、「自分たちが住むまちの自慢になるような商品を作ってほしい」との声を度々聞いたのがきっかけでした。

▲まず餅を作るところから始め、あられに仕上げていきます。使う餅米は年間約50トンに上ります

 それまではしょうゆ味のみでしたが、2ヵ月に1つを目標に次々と新製品を発表しました。マヨネーズにペペロンチーノ、うに・わさび…。ごぼう味は女性を中心に発売まもなく火がつき、今も売上ナンバーワンを誇ります。丸いあられにチョコレートをコーティングしたシリーズは発売当時8歳だった娘のアイデア。紀の川市鞆渕地区の黒豆、有田川町のぶどう山椒、紀州南高梅など県産食材を使った「地産地消 和歌山アラレシリーズ」も展開します。

 「年配の方はよく、『おばあちゃんが作ってくれたあられと同じ味』と言ってくださいます」。一方、若い世代からも〝どこか懐かしい味〟との声が。「日本人のDNAにはお米への特別な思いが含まれているような気がします。これからも手間を惜しまず、気〝餅〟を込めて、作り続けます」

 

増田米菓

岩出市岡田999-1(工場兼直売所)
9:00〜17:00 
12/31〜1/3は休み
電話 0736-62-2312
※和歌山市、岩出市、紀の川市の産直市場よってって各店、紀の川市豊田のめっけもん広場などでも取り扱い。
ネットショップ はこちら → https://www.takasagoarare.com/item-catalog.htm

(ニュース和歌山PLUS94号/2023年1月27日発行)